「内製化のハードルは下げられる。」GEOTRAの代表が語る副業転職のメリットと、正社員転換できる人材要件
(代表取締役社長) 陣内 寛大氏
内製化の本当の価値は“リスクを取れる”こと
鈴木氏:陣内さん、早速ですが、自己紹介と株式会社GEOTRA様の概要について教えていただけますか。
陣内氏:株式会社GEOTRAの社長しております、陣内と申します。GEOTRAは、主に人流データを中心とした情報ビッグデータのソリューションやプロダクトをエンタープライズ向けに提供している会社です。
私たちの会社は、三井物産とKDDIが合弁で設立したジョイントベンチャーとして、2022年の4月に誕生しました。
私自身は2018年に三井物産に新卒入社し、DXの実装やデジタル技術を活用した新規事業の立ち上げを主に担当してきました。
そうした新規事業の中でも特に、人流データは今後さらに重要なデータとなると思っています。このビジョンを持ってKDDIに提案をし、さまざまな経緯を経て会社を創り、現在の形に至っています。
事業としては、街づくりや都市開発、交通、土木、防災などの領域に注力しておりまして、昨年は東京都と一緒に都庁がある新宿付近の都市開発事業で、プランニングの一部をお手伝いさせていただきました。
こういった再開発に関わる取り組みが増えている状況です。
鈴木氏:非常に面白い取り組みですね。大企業ジョイントベンチャーならではのメリット、デメリットはありますか。
陣内氏:まず、メリットとしては大企業ならではの営業ネットワークを使えることですね。一方デメリットについては現状あまり感じていません。
鈴木氏:弊社も、直近でSalesforceとの提携をスタートさせましたが、大手ネットワークと我々の価値をうまく掛け合わせていくことが重要になってくると思っています。また、組織を立ち上げる際に、会社の展望やカルチャーについて意識していたことはありますか。
陣内氏:スタートアップの段階で特に意識していたのは「情報の透明性」です。弊社では、社長から業務委託、学生のインターンの方まで含めて、全員が全チャンネルに基本的には参加していて、どんな情報にもアクセスできるようにしています。
また、「ベストプラクティスを取り入れよう」というバリューを掲げています。今までのやり方を踏襲するのではなく、今この会社に最もフィットした、まさに「ベストプラクティス」を世の中の標準を調べた上で取り入れること、を一つのカルチャーとしています。
他には、早く進化するために内製開発についてもかなり意識して進めていました。
鈴木氏:内製化をやってよかったと思う点は具体的に何でしたか。
陣内氏:内製化の本当の価値は“リスクを取れる”ことであると考えています。我々は、創業時から特にこだわりを持って進めており、どんな開発を行う際も「出発点から事業を創る」という考えのもと、内製化することで早く進化できるようにしています。
スタート時は、副業から入ってもらうことをあまり経験したことがなかったためうまくいくかどうかの不安はありました。しかし、現在ではむしろ副業採用が当たり前になっています。
正社員に固執せず、業務委託や副業エンジニアも積極採用
鈴木氏:最初に組織を作るときは、かなり少人数で始められたのですよね?
陣内氏:はい、始めは4人からスタートしました。
鈴木氏:そこから先に正社員や業務委託の人を採用するというフェーズがあったかと思います。人を採用する上では色々な手段があったと思うのですが、どのようなことを重視して、組織づくりに着手していったのでしょうか。
陣内氏:最初に、私たちはエンジニアの採用が事業の成長のために不可欠だと感じていました。そのため、Offersさんを利用してエンジニアをチームに迎え入れました。その際、正社員としての採用に固執せず、業務委託や副業ベースでのエンジニア採用を行っていました。
一方、ビジネスサイドの採用は慎重に進めてきました。現在、私たちの組織には営業職や事業企画職の正社員はおらず、その他の部署は初期メンバーや出資者を中心に運営しています。
このような状況を考慮して、エンジニアのチームをどう形成するかを重視した結果が、雇用体系にとらわれない採用だったのです。
鈴木氏:正社員採用にこだわらなかったのは、やはり採用速度を重視した結果ということでしょうか。
陣内氏:そうですね。いきなり正社員として採用するのは、インセンティブの設計ができないという課題を抱えていましたし、カルチャーやスキルマッチでの不安な面もありました。そのため、最初は業務委託とか副業ベースの方がいいとは思っていましたね。
鈴木氏:業務委託で採用していくことに不安は感じていましたか。
陣内氏:私自身が学生時代から業務委託でエンジニアの仕事をしていた経験もあり、採用フローや役割をきちんと設計すれば、特に問題は起こらないと思っていました。そのため、不安はあまり感じていませんでしたが、そのための法務対応では苦労した記憶がありますね。
「副業採用」によって、内製化のハードルは下げられる
鈴木氏:さまざまなクライアントを見て思うのは、「正社員としていきなりアプローチをした際の採用成功率の低さ」と「会社の知名度とエンジニアが感じる魅力にはギャップがある」という点です。陣内さんはどうお考えですか。
陣内氏:そうですね。三井物産はエンジニア採用の実績やノウハウがあまりなかったのですが、副業採用という手段に頼らざるを得ない点は理解をしてもらえました。世の中の流れを見ても、大企業でも業務委託・副業の採用はスタンダードになりつつあります。
理想を言えば、エンジニアチームを内製化できればいいなとは思っています。しかし、数十年続いてきた雇用形態に、いきなりエンジニアという新しい職種を入れるのはとてもハードルが高いとも感じています。
だからこそ、副業という形でハードルを下げた状態でスタートさせることが、合理的な選択ではないでしょうか。
鈴木氏:たしかに、ハードルを下げることは重要ですね。初めの受け入れはうまく行ったのですか。
陣内氏:スタート時は、副業から入ってもらうことをあまり経験したことがなかったためうまくいくかどうかの不安はありましたし、実際に苦労もありました。しかし、現在ではむしろ副業採用が当たり前になっています。
副業エンジニアからの助言により、新たな学びも
鈴木氏:副業採用を始めて、良いと思った点はありますか?
陣内氏:特に良いと思えたのは、副業の方から担当者に忌憚のない意見やアドバイスを直接いただけることです。
特に創業初期などの段階で、「このタイミングで2〜3年後の開発ロードマップを作る意味がどこまであるのか」といった指摘や、ドキュメント管理のアドバイスなど、貴重なフィードバックをいただきました。
これらのフィードバックをどのように組織内で管理し、どのように優先順位をつけるか、といった点に関しては、副業の方々から多くを学びました。
鈴木氏:企業の方から「こうして欲しい」というオーダーを出すのではなく、逆だったということですね。
陣内氏:はい。現在でも、私たちのやり方で疑問や問題点を感じたら、皆さんの主観で構わないので、遠慮なくフィードバックして欲しいということを、1on1のミーティングなどで常に伝えています。
「副業転職」のシグナルを察知できる環境が大切
鈴木氏:副業から正社員への転換、いわゆる副業転職は、シグナルやタイミングの見極めがとても重要ですよね。御社はどのような基準を定めているのですか。
陣内氏:我々としては、ほとんどの方に対して正社員としての可能性を感じており、それを見据えた副業や業務委託のオファーを出しています。
ただ、全ての方が転職を考えているわけではないため、シグナルを直接尋ねることも多いです。私自身も2カ月に1回、副業の方を含めて1on1の面談を実施しており、そこで転職願望や本業の状況、将来のキャリアプランについて話を聞きます。
鈴木氏:1on1は有効ですよね。副業転職をうまく成功させられてる企業は、1on1をうまく使われている印象があります。
陣内氏:最近は副業としてジョインしていただく段階で、副業転職について我々が視野に入れていることを伝えるようにしています。最初から正社員化前提でお互いにジャッジできるようになった点は、とても良かったと思っています。
プロセスで言えば、おっしゃるとおり1on1の重要性については我々も感じていて、そのため1on1の密度を高めました。その中で副業転職についての意思を確認し、副業転職の意思がある方とは条件面を含めて詰めていくという流れです。
「副業転職」のメリットと「正社員採用」との使い分けについて
鈴木氏:三井物産さんに在籍されていた時は、新卒や中途採用から直接正社員として入社する方々がいたと思います。そうした方々と、今回のように業務委託や副業を経て入社する方々との間に感じる違いは何でしょうか。
陣内氏:初めから正社員として入社する方々とは違い、半年以上の副業期間を経ての入社は、その人の人となりやスキルセットを十分に理解した上での入社となります。この点での安心感は計り知れません。
さらに、副業期間があることでカルチャーへのフィット感をあらかじめ把握でき、最初からスムーズなスタートを切ることができます。
鈴木氏:今後、最初から正社員として採用する意向はありますか。
陣内氏:エンジニアの採用に関しては、正直、明確なイメージはまだ持っていません。エンジニアの場合は、副業の形で当社のカルチャーやスキルセットの確認をしてもらい、その後、フルタイムでの参加を検討するのが理想的だと考えています。
一方、営業職やコンサルタント職の方々は、副業の形での参加だけでは、当社の実際の業務内容やカルチャーを完全に理解するのは難しいと感じています。
特に、コンサルタント職のように頻繁にお客さまとの接点がある場合、その実際の業務フローを体感するためには、フルタイムでの参加が必要だと考えています。
GEOTRAの求める人材とは?
鈴木氏:最後に、今後のエンジニア募集や、特に求めているスキルや人材について教えていただけますか?
陣内氏:株式会社GEOTRAでは継続的にエンジニアを募集しています。特にデータサイエンティストやデータアナリストとして、データの分析能力を持った方や、人流データの分析が可能なWebダッシュボードの作成に携われる方を求めています。
我々がKDDIから取得しているデータは、一般的にアクセスできない希少性の高いものです。そのため、これらのデータを扱うのは非常に面白く、興味を持っていただける点でもあります。さらに、データをお客様に価値として提供し、業務に取り入れてもらうためのコンサルタントも積極的に募集しています。
鈴木氏: ありがとうございます。興味を持った方は、Offersの求人情報をご覧いただければと思います。
陣内さん、本日はお話しいただき、ありがとうございました。
陣内氏:ありがとうございました。
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