エージェンティック AI とは、複数の AI エージェントを組み合わせ、大きな目標を個別の作業に分けたうえで、計画から実行までを自律的に進める AI システムのことです。1つの作業を受け持つ AI エージェントを部品とすると、エージェンティック AI はそれらを束ねて目標を達成する仕組み全体にあたります。

AI エージェントとの違いは、単体か仕組み全体かにある

AI エージェントは個別の目的に向けて自律的に動く単体のシステムで、エージェンティック AI はそれを複数組み合わせて大きな目標を達成する仕組みを指します。

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」での AI エージェントの定義は、「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動する AI システム」です。同じ箇所の脚注は、エージェンティック AI を AI エージェントより広く発展した概念と位置づけ、「複数の AI エージェントにより自律的に意思決定を下しアクションを起こす目標主導型の AI システム」と説明しています。

ここでいう自律は高度な自律状態に限らず、ある程度の自律性を持つものも含むとされています。途中で人の承認を挟む仕組みも、エージェンティック AI に当たりうるということです。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

国際機関の整理も同じです。OECD(経済協力開発機構)は2026年2月に報告書「The agentic AI landscape and its conceptual foundations」を公表しました。要点を紹介した OECD.AI の記事は、AI エージェントを、ある程度の自律性をもって環境を知覚し働きかけるシステムとし、エージェンティック AI を、一般に連携する複数の AI エージェントで構成されるシステムとしています。両者は近い関係にあるものの置き換えのきく語ではない、というのが記事の挙げる1つ目の要点です。

出所: OECD.AI「What agentic AI is and does」(2026年3月3日)

観点 AI エージェント エージェンティック AI
指すもの 1つの目的に向けて動く単体のシステム 複数のエージェントを束ねた仕組み全体
目標の扱い 与えられた個別の目的を達成する 大きな目標を個別の目的に分け、各エージェントに割り振る
動きの例 問い合わせを分類して担当に回す 分類・回答案の作成・記録の更新を、役割の違うエージェントが分担して進める
導入で問われること そのエージェントの精度と権限 エージェント同士の受け渡し、全体の権限、止め方、責任の所在

単体の AI エージェントについては、用語集の AI エージェント を参照してください。

生成 AI・RPA との違いは、次の手順を誰が決めるかにある

生成 AI と RPA が人の決めた範囲で動くのに対し、エージェンティック AI は目標から次の手順を組み立て、実行まで進めます。

AI事業者ガイドラインは生成 AI を「文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルにもとづく AI の総称」と定義しており、受け持つのは作るところまでです。RPA(決まった画面操作を自動で繰り返すソフトウェア)は人が書いた手順をそのままなぞるため、手順が変われば人が直す必要があります。エージェンティック AI の場合は、生成 AI を部品として使いながら、外部のシステムを操作して作業を終えるところまでが守備範囲です。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

導入するときは、任せる範囲・権限・記録・効果の測り方を先に決める

エージェンティック AI を業務に入れるときは、作り始める前に、任せる範囲・権限・記録・効果の測り方の4つを決めておく必要があります。複数のエージェントが受け渡しをしながら動くので、1つの判断の誤りが次の作業へそのまま流れていくためです。

決めること 中身 決めないと起きること
任せる範囲 AI が自分で決めてよい判断と、人が承認する判断の境目 誤った判断が人の確認なしに社外へ出る
権限 読むだけか、書き込みや送信まで許すか。触れてよいシステムの一覧 1つのエージェントの誤りが、連携する別のシステムに広がる
記録 入力・出力・判断の根拠をどこに残し、どれだけ保存するか 事故が起きたときに原因をたどれない
効果の測り方 処理件数・所要時間・差し戻しの割合など、導入前後で比べる指標 価値を説明できず、予算の継続が止まる

AI事業者ガイドラインも、各主体が取り組む指針として、必要に応じたモニタリングと対処を含めて人間がコントロールできる制御可能性を確保すること、判断根拠などのログを記録・保存すること、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討することを挙げています。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

Offers AX(株式会社overflow の AX 支援)の進め方は、こうした決めごとを、動くものを前にして業務の担当者と詰める形です。業務に特化したエージェントを設計し、プロトタイプを実業務で検証して効果を確かめてから本実装に進むので、任せる範囲や権限を机上の要件定義書だけで決めずに済みます。

構築はお客様の既存環境(GCP・Azure・AWS)で行い、当社環境に顧客データを抱えない方針です。契約が終了しても資産はお客様環境に残り、引き継ぎドキュメントの整備や社内の運用体制の設計も支援の範囲に入ります。考える人と作る人を分けないこの形は、顧客の現場に入って開発する FDE(Forward Deployed Engineer) 型の支援に近いものです。

出所: 株式会社overflow「Offers AX」サービスページ(2026年10月27日時点)

支援の全体は Offers AX のサービスページ で紹介しています。どの業務から始め、どこまでを AI に任せるかの整理からでも相談できるので、無料相談を申し込む からご連絡ください。

計画の4割超が、2027年末までに中止されると予測されている

調査会社の Gartner は、エージェント型 AI のプロジェクトの40%超が2027年末までに中止されると予測しています。理由に挙げたのは、コストの増大、事業上の価値が不明確なこと、リスク管理の不備の3つです。同社のアナリストは、現在のプロジェクトの多くが話題性に押された初期の実験や概念実証にとどまっていると指摘しました。

あわせて同社は、AI アシスタントや RPA、チャットボットといった既存の製品を、実質的な機能を伴わないまま「エージェント型」と呼び直す「エージェント・ウォッシング」に注意を促しています。エージェント型 AI をうたう数千のベンダーのうち、実体を伴うのは約130社というのが同社の見積もりです。

出所: Gartner「Gartner Predicts Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027」(2025年6月25日)

3つの理由は、いずれもモデルの性能より、導入する側の決め方に関わります。費用は任せる範囲と権限を絞るほど見積もりやすくなり、価値は効果の測り方を先に置けば説明でき、リスクは記録と人の判断を挟む位置で抑えられるからです。始めるときは1つの業務で単体のエージェントの効果を確かめ、そのあとで複数のエージェントを組み合わせる順番が現実的でしょう。

PoC で止めない進め方は AI の PoC、全社で推進する体制は AI CoE の記事で扱っています。

一緒に使われる用語は、部品・構成・人の関わり方の3つに分かれる

エージェンティック AI の話題では、部品にあたる AI エージェント、構成を指すマルチエージェント、人の関わり方を指すヒューマン・イン・ザ・ループがよく並びます。

  • AI エージェント: 特定の目標を達成するために環境を感知し、自律的に行動する AI システム。エージェンティック AI を構成する部品にあたる
  • マルチエージェント: 役割の違う複数のエージェントが連携して1つの作業を進める構成。エージェンティック AI を形にするときの代表的な作り方
  • ヒューマン・イン・ザ・ループ: AI の処理の途中に人の確認や判断を組み込む設計。任せる範囲を決めるときの基本になる考え方
  • フィジカル AI: センサー等で物理環境の情報を取り込み、AI モデルで推論・判断して、駆動系を通じて物理的な行動につなげるシステム。AI事業者ガイドラインは AI エージェントと並べて定義を加えた
  • AX(AI トランスフォーメーション): AI の活用を前提に、業務や組織のあり方を作り替えていく取り組み

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

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