AI エージェントとは、目的を与えると達成までの手順を自分で組み立て、社内のシステムや外部のツールを使いながら作業を進める AI システムのことです。質問に1回ずつ答えるチャット型の生成 AI と違い、途中の結果を見て次の行動を決め直しながら、複数の作業をまとめて引き受けます。

国の指針は「環境を感知し自律的に行動する AI システム」と定めている

国の指針では、AI エージェントは目標に向けて自ら動く AI システムという位置づけです。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AI エージェントを「特定の目標を達成するために、環境を感知し自律的に行動する AI システム」と定義し、ここでの自律には高度な自律状態だけでなく、ある程度の自律性を持つものも含むと注記しました。参考として、国際規格 ISO/IEC 22989:2022 の定義「自動化された主体であり、環境を感知して応答し、自らの目標を達成するために行動を取るもの」も並記されています。

脚注に登場する「エージェンティック AI」は AI エージェントより広い概念で、複数の AI エージェントにより自律的に意思決定を下し、アクションを起こす目標主導型の AI システムを指す、という説明です。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

この定義は、令和7年度の更新で初めてガイドラインに加わりました。同じ更新では、複数のシステムと連携しながらの自律的な行動によって、調整・分析・意思決定などの業務を効率化できることも、AI エージェントの便益として書き加えられた項目の1つです。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容」(2026年3月12日)

AI モデルを開発する企業も、実装の側から同じ区別を示しています。Anthropic は2024年12月の技術文書で、あらかじめ決めたコードの経路に沿って大規模言語モデル(LLM)とツールを動かす仕組みを「ワークフロー」、LLM が自分の進め方とツールの使い方をその場で決める仕組みを「エージェント」と呼び分けました。中身は、環境からの反応をもとにツールを使う動作を繰り返す LLM だというのが同社の説明です。

出所: Anthropic「Building effective agents」(2024年12月19日)

AI エージェントと生成 AI・RPA の違いは、手順を誰が決めるかにある

3つの違いは、作業の手順を人が決めるか、AI が決めるかに表れます。ガイドラインは生成 AI を「文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルにもとづく AI の総称」と定義しており、AI エージェントの多くは、その生成 AI のモデルを中核に組み立てられています。生成 AI と対立する技術というより、生成 AI に手順の組み立てとツールの操作まで任せる使い方の1つと捉えると分かりやすいでしょう。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日)

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)について、総務省は「人が行う定型的なパソコン操作をソフトウェアのロボットが代替して自動化するもの」と説明しています。実行してほしい作業の手順や判断の条件を、人が「シナリオ」として先に書いておく仕組みで、複数のシステムやアプリケーションをまたぐ処理も自動化できます。動くのは、人が書いた手順と条件の範囲までです。

出所: 総務省「自治体におけるRPA導入のすすめ」(2021年1月)

観点 チャット型の生成 AI RPA AI エージェント
手順を決めるのは 人(1回ごとに指示を書く) 人(シナリオに先に書く) AI(目的から組み立てる)
1回の依頼で進む範囲 1回の応答まで シナリオの最後まで 目的に届くまで、複数の作業を続ける
他のシステムとの関わり 人が結果を受け取り、人が転記する 画面の操作で複数のシステムをまたぐ ツールや API(=システム同士をつなぐ窓口)を呼び出して読み書きする
想定外の入力への対応 人が読んで判断する 書いた条件の範囲で処理する 状況を見て次の行動を変える
向く業務 文書の要約・下書き・壁打ち 手順と判断の条件が決まった定型作業 手順が案件ごとに変わり、複数のシステムをまたぐ作業
主な注意点 事実と異なることをもっともらしく答えることがある 業務の手順が変わるとシナリオの書き直しが要る 人の意図しない操作をすることがある

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」と総務省「自治体におけるRPA導入のすすめ」をもとに編集部が整理

表の3つは優劣を比べるものではなく、業務の性質で使い分けるものです。Anthropic も、まず最も単純な方法を探し、必要なときにだけ複雑にするよう勧めています。エージェント型の仕組みは処理の速さと費用を引き換えに作業の出来を上げるもので、自律的に動く分だけ費用が増え、誤りが積み重なるおそれもあると同社は指摘しました。手順が毎回同じ作業はワークフローや RPA で組むほうが割に合う、というのが実務上の目安です。

出所: Anthropic「Building effective agents」(2024年12月19日)

業務に入れるときは、任せる範囲・権限・人の確認を先に決める

AI エージェントを業務に入れる前に決めるのは、どこまで任せるか、どのシステムに何をさせてよいか、どこで人が確かめるかの3つです。チャット型の生成 AI と違い、AI エージェントの誤りは文章の誤りで終わらず、システムの操作として表に出るからです。令和7年度のガイドラインの更新では、自律的な動作の中で人間の意図しない商品の注文やファイル削除などを行う可能性と、外部システムとの連携の過程で脆弱性を突かれ、内部データが意図せず外部に送信されるおそれが、AI エージェントのリスクとして加わりました。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容」(2026年3月12日)

決めること 書いておく項目 ガイドラインの留意事項との対応
任せる範囲 対象の業務と工程/AI エージェントに任せる工程と人に残す工程/やめる条件 判断が必要となる事項を重要度に応じて整理し、対象を選ぶ
権限 読めるシステムとデータ/書き込めるシステム/持たせない操作(送金・削除・社外への送信など) 付与する権限を業務の遂行に必要な最小限にする/連携するツール・システムを許可したものに限る
人の確認 人が承認する操作/出力を確かめる人/操作の記録を見る頻度と担当 重大な影響が生じ得る出力には人間の判断を介在させる/操作履歴を定期的に確認する

任せる範囲:案件ごとに判断が変わる工程に絞る

任せる範囲は、業務を工程に分け、手順が毎回同じ工程と、案件ごとに次の作業が変わる工程を見分けると決まります。AI エージェントに向くのは後者で、Anthropic もエージェントを使う場面として、答えの決まっていない問題(open-ended problems)を挙げています。手順が決まっている前者まで任せると、費用と処理時間が増えるわりに得るものが少ないため、ワークフローや RPA に回すのが基本です。

出所: Anthropic「Building effective agents」(2024年12月19日)

権限:業務に必要な最小限のシステムとデータに絞る

権限は、AI エージェントがつながるシステムと、そこでできる操作を一覧にして、業務に要るものだけを残すと決まります。ガイドラインの更新は AI を提供する事業者の留意事項として、ユーザーやシステムに付与する権限を業務の遂行に必要な最小限に設定すること、連携するツール・システムをホワイトリスト方式(=あらかじめ許可した相手だけを使える方式)で制限すること、不要なデータや冗長なログを削ってデータを最小化することを挙げました。

実務での第一歩は、読むだけのシステムと書き込むシステムを分けることです。送金・発注・削除・社外への送信のように取り消せない操作は、AI エージェントに持たせないか、実行の前に人の承認を挟む形にしておくのが安全です。

人の確認:取り消せない操作の前と、影響の大きい出力に人を置く

人の確認は、影響の大きいところに絞って置くのが、現場で続けられる形です。ガイドラインの更新は AI を利用する事業者に向けて、出力によって重大な影響または被害が生じ得る場合は人間の判断を介在させる仕組みに基づいて判断すること、自律性を持って動く AI エージェントについては操作履歴を定期的に確認・報告することが重要だという内容を加えています。Anthropic の技術文書も、エージェントが途中の確認点や行き詰まったところで止まり、人の判断を受けられる作りを示しました。

反対に、すべての出力を人が見る設計は、確認の手間が元の作業を上回りやすく、AI エージェントを入れた意味が薄れる原因です。どの操作で止めて誰が承認するかを、任せる範囲と同じ表に書いておくと、運用が始まってから迷わずに済むはずです。

Offers AX は、業務に合わせた AI エージェントを設計し、検証してから本実装へ進める

Offers AX の AI エージェント開発は、業務固有の文脈を織り込んだ AI エージェントを設計・構築し、数週間で動くプロトタイプを作ったうえで、実業務での検証から本実装へ進む進め方です。業務の現場に近い距離で戦略立案と実装を一体で進める FDE(Forward Deployed Engineer)のモデルで支援しており、FDE そのものの説明は Offers FDE の解説記事 にあります。構築はお客様の既存環境で行い、当社環境に顧客データを抱えません。AI の出力を下書き・参考情報の位置づけとし、事実認定・合否・処遇は人が判断するという考え方も、サービスページに載せている方針の1つです。

出所: 株式会社overflow「Offers AX」サービスページ(2026年10月27日時点)

AI エージェントに任せる工程と人に残す判断の分け方は、業務ごとに変わります。支援の範囲と進め方は Offers AX のサービスページ にまとめており、コンサルティングでは課題調査とユースケースの選定から支援しているので、どの業務から手を付けるかが決まっていない時点でも 無料相談を申し込む からご連絡ください。

企業の AI 活用は、まだ文書づくりが中心にとどまる

国内企業が AI を使う用途は文書の要約や作成が中心で、業務の流れそのものの自動化はまだ一部です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年4〜6月に国内企業へ行った調査では、AI の利用用途は「文書・音声の要約・翻訳・校正」が82.5%、「文書・レポートの作成(社内・社外)」が80.5%だった一方、「業務プロセス・ワークフローの自動化・最適化」は21.2%でした(n=1,191)。

出所: 独立行政法人情報処理推進機構「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント」(2026年7月16日)

AI エージェントが受け持つのは、このうち業務の流れを自動化する側の使い方です。個人が文書を作る道具として使う形から、システムの操作を伴う業務を任せる形へ移る企業は、まだ多くありません。先に挙げた任せる範囲・権限・人の確認の3つは、この移り目で初めて決める必要が出てくる取り決めです。

AI エージェントに向かない業務もある

AI エージェントは、どの業務にも入れればよいものではありません。判断の理由を人に説明する責任がある業務は、その代表です。ガイドラインの更新は、LLM が示す根拠は内部の決定ロジックを説明したものではなく、もっともらしい理由を出力しているに過ぎないという点を明記しました。人事の評価や処遇のように、なぜその結論になったかを本人に説明する必要がある判断は、AI エージェントに決めさせず、材料の整理までを任せて人が決めるほうが無理がありません。

出所: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドラインの令和7年度更新内容」(2026年3月12日)

ほかにも、月の件数が少なく、仕組みを作って保守する費用を回収できない業務や、出力の確認に元の作業と同じだけの時間がかかる業務は、AI エージェントにする前に、手順そのものの見直しや、RPA・ワークフローでの自動化と比べる価値があります。AI エージェントを入れるかどうかは、技術の新しさより、任せた工程で人の手がどれだけ空くかで判断するのが確実です。

関連する用語

AI エージェントとあわせて押さえておきたい用語は次の5つです。

  • AX(AI トランスフォーメーション): 全社で AI を業務に組み込み、仕事の進め方を変える取り組み。AI エージェントは、その中で業務の流れを受け持つ仕組みの1つ
  • エージェンティック AI: 複数の AI エージェントにより自律的に意思決定を下し、アクションを起こす目標主導型の AI システム。AI事業者ガイドラインは脚注で触れるにとどめている
  • ワークフロー: あらかじめ決めた経路に沿って LLM とツールを動かす仕組み。手順が決まった作業に向く
  • RPA: 人が書いたシナリオに沿って、定型的なパソコン操作をソフトウェアのロボットが代わりに行う仕組み
  • 生成 AI: 文章、画像、プログラム等を生成できる AI モデルにもとづく AI の総称

業務に入る AI エージェントの作り方と発注の仕方は AI エージェント開発の記事 に、AI エージェントに関するほかの記事は AI エージェントのカテゴリ にまとめています。