在宅勤務とはどんな制度か

企業と雇用契約を結び、自宅で働くことを『在宅勤務』といいます。同じ在宅勤務でも、内容はさまざまです。
全ての仕事を自宅で行うケースもあれば、自宅で働く日が月に数日ある程度というケースもあります。在宅勤務の制度について知り、今後の働き方の参考にしましょう。
テレワークの形態の一種
在宅勤務は『テレワーク』の一つと位置付けられています。
テレワークは、オフィス以外の場所で仕事をする働き方です。PCやスマホなど、さまざまなコンピューターを使った情報処理や通信技術を活用して、勤務に必要な環境を整えます。
また、企業と雇用契約を結んで働く『雇用型』と、個人事業主や小規模事業主として働く『自営型』に分類可能です。
この2種類のうち、在宅勤務は雇用型に分類されます。会社に雇われて自宅で仕事をすることを在宅勤務といいます。
在宅勤務が注目される背景
在宅勤務が注目されているのは、社会問題解決の糸口になる可能性があるからです。
例えば、少子高齢化です。在宅勤務を導入することで、これまでの働き方では仕事をしにくかった人が働けるようになりました。育児や介護をしている人・高齢者・障害者などです。
仕事と家庭を両立できる在宅勤務なら、育児や介護に悩み仕事を辞める必要はありません。また、通勤やオフィスでの仕事が困難という人であっても、自分の働きやすい環境で仕事ができます。
地域活性化の対策としても期待されています。在宅勤務なら、通勤する必要がないので住む場所は自由です。人口が減少している地方の地域へのUターンやIターンが増えれば、地域活性化につながる可能性があります。
在宅勤務で得られるメリット

社会問題の解決につながると期待されている在宅勤務ですが、働く側にはどのようなメリットがあるのでしょうか?在宅勤務が出社して働くよりも優れている点を紹介します。
生産性が向上する
まず挙げられるのは、生産性があがるという点です。
オフィスで働いていると、どうしてもイレギュラーなことが起こります。予定外の会議・顧客からの電話の他、同僚との会話も度がすぎると業務の妨げになるでしょう。
30分集中したら終わる仕事も、このように業務を中断することが頻発すると、なかなか進みません。結果、想定したほど仕事が片付かないということもあるでしょう。
在宅勤務では、オフィスで働くときのように、仕事を中断されることがありません。集中的に取り組めるので、30分で終わる仕事を30分で片付けられるのです。自己管理さえできれば、業務効率化と生産性の向上につながります。
通勤時間のストレスから解放される
自宅で働く場合、通勤時間は0です。満員電車で移動したり、長時間電車に揺られたり、ベッドタウンから都心の職場へ行くのに朝5時に出発する、といった必要がありません。通勤による疲労やストレスをなくすことができます。
その分、仕事に集中しやすいコンディションを整えられます。時間にゆとりを持って起床し、朝食をしっかり食べ、家事をこなしてから仕事に臨めるのです。精神的にも時間的にも余裕が生まれます。
人間関係に苦しまなくて済む
働く人の中には、職場での人間関係が苦痛という人もいます。そうした人にとって、職場の人との接触が最低限で済む在宅勤務には、大きなメリットがあるといえます。
仕事を在宅のみで行うスタイルなら、やり取りはWeb会議やメール・電話などに限定されます。必要な要件に絞ってやり取りをするだけなので、余計な気を遣う必要がありません。
在宅勤務は人間関係の悩みを抱えやすい人でも、負担を感じることなく働きやすいのです。
ワークライフバランスが整う
ワークライフバランスを重視する場合にも、在宅勤務は役立ちます。その日にすべきことに集中して取り組み、空いた時間を家族や趣味のために使えるのです。
うまく取り組めば、オフィスで働くよりも成果をあげつつ、プライベートの時間も増やせる可能性があります。
こうした働き方が可能な在宅勤務は、子どもとの時間を作りやすく、子育て中の家庭には特に向いているでしょう。
在宅勤務の注意点

時代の一歩先を進んだ働き方でメリットが大きくみえる在宅勤務ですが、デメリットもあります。在宅勤務を検討するときには、デメリットも同時に考えた上で決定しましょう。
長時間労働になる可能性がある
在宅勤務で働く場合、契約内容はさまざまです。勤務時間が決まっているケースもあり、時間の定めがなく成果によって判断されることもあります。
特に後者の場合、長時間労働になりやすいため注意しましょう。
通常の勤務時間では終えられないような分量の仕事を任されたり、1件あたりの報酬が低すぎたりする場合、長く働いてカバーするしかなくなるからです。
そのため、在宅勤務を始める前に、雇用契約の内容を入念に確認し、適正に仕事ができる状態を整える必要があります。
コミュニケーション不足
社員同士のコミュニケーションが不足しやすいことも、在宅勤務のデメリットです。
オフィスで働いていると、言葉でのやり取り以上にさまざまな情報交換をしています。例えば、表情や声のトーンのちょっとした違いや、その場の空気感などです。
このように『空気を読む』ことや『暗黙の了解』を前提として仕事が進められている場合、在宅勤務は非常に難しいでしょう。情報共有がスムーズにいかない、ということも起こります。
これらの事態を解消するには、スムーズに連絡を取り合えるツールの活用が便利です。こまめに連絡を取り合うことで、コミュニケーション不足による業務の滞りを避けられます。
正当な評価が得られないことも
在宅勤務の社員とオフィスで勤務する社員との間に、評価の不平等が生まれる可能性があります。
上司が勤務態度や仕事の進捗を直接見ることのない在宅勤務は、仕事の結果のみで評価されることになるからです。評価基準が明確になっていない場合、正当な評価が得られないかもしれません。
そのため、目標や評価方法を明らかにして、双方で理解してから在宅勤務に取り組みましょう。
在宅勤務に適した仕事や求人の例

在宅勤務は自由度の高い働き方として知られていますが、在宅でできる仕事とできない仕事があります。
例えば、特殊な設備が必要な技術者や職人、その場にいなければできない営業や販売、といった仕事は在宅勤務ができません。
では、どのような仕事なら在宅勤務ができるのでしょうか?代表的な仕事を紹介します。
IT関連のエンジニア
在宅勤務がいち早く広まったのは、IT関連のエンジニアでした。システムエンジニアやプログラマー・サーバーエンジニア・ネットワークエンジニアなどがそうです。
オフィスから離れて行う仕事は、1人でできる仕事が向いています。複数人で協力し合いながら進める仕事の場合、綿密なやり取りが発生するため、どうしても在宅ではやりにくいのです。
IT関連のエンジニアが担う仕事は、1人で完結する仕事が多いため、在宅でも問題なく仕事を進められます。
デザイナー
デザイナーの仕事も基本的に1人で進められる内容が多く、在宅勤務が可能です。PCやその他の必要なツールさえあれば、どこにいても仕事ができます。
ただし、在宅勤務を行うためにはデザインとコミュニケーションの高いスキルが必要です。遠隔でやり取りをするため、仕事を深く理解していない場合、ディレクターの要望を適切に汲み取れない可能性があります。
裏をかえせば、高い技術スキルとコミュニケーション能力さえあれば、在宅勤務でデザインに集中して取り組める環境が手に入るのです。
翻訳や英文添削など英語を活かした仕事
英語を活かして行う翻訳や英文添削も、在宅勤務ができる仕事です。
ただし、単に英語が得意といった程度では不十分な場合もあります。翻訳に必要な専門知識を持っていなければいけないケースもあるからです。
例えば、医療に関する英文を翻訳するためには、医療用語を知り理解している必要があります。また、メールや小論文の添削作業をする英文添削は、『英検準1級』や『TOEIC850点台』程度の語学力を持っていることが求められます。
在宅勤務を生産的にするコツ

「自宅は誘惑が多くてなかなか作業が進まない・・・」「無駄なことをやっているつもりはないのに、気がついたら時間がすぎている」
そんなふうに感じている人もいるかもしれません。そう感じてしまうなら、生産性を高めるためのコツを押さえて、仕事に取り組んでみましょう。
作業スペースを整える
まず大切なのは、作業スペースを確保して整えることです。狭いスペースでも、『この場所に行けばいつでも仕事が始められる』という場所を作りましょう。自宅内にミニオフィスを作る感覚です。
そこに仕事に必要なものを揃え、セットしておきます。仕事専用のスペースがあることで、オンオフを切り替えやすくなるのです。
時間管理を徹底する
「いつも気がついたら時間ばかりすぎている」という人は、気づかぬうちに多くの無駄な時間を過ごしています。何にどれだけ時間を使っているのか、徹底的に調べて記録をつけてみましょう。
改めて記録をつけることで、時間をかけすぎているものや、優先順位を誤っているものがあることに気づきます。
例えば、メールの返信に時間がかかりすぎているなら、どうすれば改善できるか考えてみましょう。簡単なテンプレートを用意しておくだけで、作業時間がぐっと短縮できるかもしれません。
時間管理を徹底することで、効率的に仕事を進められるでしょう。
まとめ
企業と雇用契約を結んで自宅で働く在宅勤務は、少子高齢化や地域活性化といった社会的な問題解決に役立つとして注目を集めています。
労働者にとっても、メリットの大きな働き方です。通勤時間が必要ない分、家事や仕事に時間を使うことができ、人間関係のストレスを感じることなく働けます。
集中できる環境を整えると、オフィスで仕事をするよりも効率的に働ける可能性もあります。在宅勤務制度を整えている企業も増えているので、検討してみてはいかがでしょうか。