SOHOの意味

近年、働き方改革が話題になるに伴い、さまざまなワークスタイルに注目が集まるようになってきました。そんな中でよく耳にするようになったのが『SOHO』という単語です。
SOHOとは、どのような意味なのでしょうか?まずは、その基本情報についてまとめていきます。
委託業務を行う働き方
SOHOとは『委託業務を行う働き方』を指しています。Small Office/Home Officeの略からできた単語で、文字どおり、小さなオフィスや住宅を仕事場として利用するのが特徴です。
スマートフォンやインターネットの普及により、近年ではわざわざ職場に行かなくても仕事ができるようになりました。企業に属さずに個人で仕事をこなす人が増えてきているのも、それが原因だと考えられるでしょう。
働き方だけでなく、このような業種の人が利用する物件のことをSOHOと呼ぶケースもあります。
フリーランスやテレワークとの違い

委託業務を行う働き方をSOHOと呼びますが、同じように個人で仕事を行うフリーランスやテレワークとの違いはどのようなところにあるのでしょうか?
それぞれの形態には特徴があり、類似している点とそうでない点があります。どのような違いがあるのかまとめていくのでチェックしていきましょう。
フリーランスの業態はさまざま
企業に属さずに個人で仕事行う人のことを『フリーランス』と呼びます。フリーランスの業態は多種多様で、ウェブデザイナーや翻訳家でも、個人で仕事を請け負って入ればフリーランスと呼ばれます。
同じフリーランスであっても、仕事の請け負い方には違いがあります。知人づてで単発の仕事をこなしつないでいく人もいれば、企業から仕事を回してもらう人など、形態はさまざまです。
どのパターンでも企業との雇用関係は結んでいないのが特徴です。そのため、自分の好きな時間に好きな場所で業務を行うことができます。
テレワークは会社員
フリーランスと同じように、好きな場所で働けるのが『テレワーク』です。大きな違いは、『会社員である』という点でしょう。
企業と雇用関係を結んでいない形態をフリーランスと呼ぶのに対し、会社に属しているが好きな場所で仕事ができる人をテレワークと呼びます。近年では、在宅勤務のこともテレワークと呼ぶことがあります。
個人事業主は法律によって定義されている
法律によって定義されている『個人事業主』とは、『会社と雇用関係を結ばず、個人で事業を行っている人』を指しています。
この点だけ見るとフリーランスと違いがないように思えますが、個人事業主には、個人経営のお店も含まれています。飲食店などのお店は、企業から仕事を請け負っているわけではありません。そのため、フリーランスと個人事業主には微妙な違いがあるといえます。
しかし、飲食店の中でも、事業を行う際に『法人』登録しているところがあります。そのような場合は、個人事業主ではなく法人だと判断されます。
SOHOの主な業務内容

SOHOと似たような業種についてまとめてきましたが、より具体的にSOHOの業務内容について見ていきましょう。SOHOに分類される業務は、フリーランスと同様にいろいろなジャンルがあります。
いろいろなジャンルの中でも、特にSOHOとして仕事のしやすいものを集めたので、どのようなものが含まれるのか紹介していきます。
フリーライター
近年、ウェブ上に載せる記事を執筆する『フリーライター』の需要は増加傾向にあります。パソコンさえあれば自宅でできる業務内容なので、SOHOという形態に含まれる代表的な職種の一つといえるでしょう。
基本的な業務の流れは、編集部と連絡を取り合い、執筆を任された記事を規定のシステムやページに投稿するのみです。持ち運べるパソコンであれば、在宅のみならず、自分の好きな場所で仕事ができるのも特徴の一つでしょう。
プログラマー
雇い主から渡される仕様書に基づき、求められている画面や機能を実装するのが『プログラマー』の基本的な業務内容です。この職種も、SOHOでやりやすい仕事の一つとされています。
しかし、プログラマーの場合、雇用主の要求によっては特定の環境下で作業を行わなければならないケースもあります。
たとえば、セキュリティの保護が充実している環境下で作業を行う必要がある際は、個人のパソコンが使えないこともあります。そうなると自宅で作業ができなくなるため、SOHOとはいえなくなります。
Web制作
インターネットが身近になるにつれ、Webサイトの重要性も高くなってきました。そんな中、需要が増加している仕事が『Web制作』です。この職種もSOHOで行いやすい仕事として挙げられます。
Web制作の業務内容は、企業や個人のサイトを制作したり運用したりするものです。作業範囲もさまざまで、サイト全体を担当する場合や特定のページのみを制作するケースもあります。
Webデザインに関するプログラミング用語や制作能力が必要となるため、知識を持っていない初心者だと、いきなり手をつけるのは難しい職種だといえるでしょう。
画像や動画の編集・加工
動画や画像の『編集・加工』を行う仕事もあります。この職種では、フォトショップやイラストレーターなどの編集ソフトを扱えるのが必須のスキルです。しかし、これらのソフトを使いこなせれば、自宅でも仕事ができます。
技術が必要な仕事ですが、一つの仕事に対する報酬額はさまざまです。一般的には、制作する画像の数やサイズ、種類によって単価が変わるため、少ない案件で一定の額を稼ぐことも不可能ではありません。
SOHOで仕事をするメリット

会社に通わずに仕事ができるSOHOには、魅力的なメリットが複数あります。人それぞれ求めているワークスタイルは異なるため、SOHOのメリットを参考に仕事を選ぶのも選択肢の一つでしょう。代表的なメリットについてまとめていくので、参考にしてみましょう。
仕事を選べる
紹介してきたように、SOHOには豊富なジャンルの仕事があります。そのため、多くの選択肢の中から『自分の好きな仕事を選べる』というのがSOHOのメリットです。
企業に属すと、どうしても自分のやりたかった仕事ができないということも多いでしょう。本来やりたかったこととは違う業務をこなすのは、精神的にも疲労がたまってしまいます。
自分のスキルを活かして仕事ができるSOHOは、無理してやりたくない仕事をする必要がありません。特技を生かした仕事をしている人が多いのも特徴です。
場所や時間に縛られない
個人のオフィスで業務を行うため、場所や時間に縛られず『自分のペースで仕事ができる』というのもメリットの一つです。SOHOは、会社に行かず自分のオフィスで仕事をします。そのため、通勤電車に揺られることもなければ、定時に出社する必要もありません。
好きなときに作業ができるため、副業で仕事を行うのにも向いています。一つの仕事が忙しいときでも、ひと段落したときにもう片方の仕事をこなすという器用な方法もあります。
自分の能力が最大限発揮できるタイミングで仕事ができるため、作業効率も上がり、仕事に費やす時間を短縮することもできるでしょう。
人間関係から解放される
業務内容と少し違うメリットとして『人間関係から解放される』という魅力があります。
SOHOの業務のほとんどは、直接人と会って行うものではなく、ネット上でのやりとりが基本となります。そのため、人とのコミュニケーションが苦手な人や、多くの人との人間関係の中で仕事がしたくないという人にはぴったりです。
基本的なコミュニケーションができないと、SOHOでも仕事を請け負うことができませんが、最低限のやりとりで済むため、会社で働くよりはだいぶコミュニケーションが少なくても済むでしょう。
SOHOで仕事をするデメリット

SOHOで仕事をするメリットについてまとめてきましたが、もちろん、魅力的な側面に合わせてデメリットもあります。SOHOのデメリットには、どのようなものが挙げられるのでしょうか?デメリットも知った上で、さらにその特徴について理解していきましょう。
収入が不安定
SOHOのデメリットの一つに『収入が不安定』という特徴が挙げられます。SOHOでは、常に自分から仕事を見つけにいく姿勢が求められます。そのため、仕事を任せてくれるクライアントが見つからなかった場合、それに比例して収入を得ることもできなくなります。
たとえば、特定のクライアントのもとで仕事を行っていても、途中で契約が終了してしまうというケースも少なくありません。決まった企業と雇用関係を結んでいるわけではないため、そのぶん収入が不安定なことも知っておきましょう。
自己管理が必要
SOHOでもっとも挙げられるデメリットが『自己管理が必要』という点です。SOHOのメリットとしても挙げられる『自分の好きなタイミングで仕事ができる』という点が、逆にデメリットになってしまうのです。
自分の好きなタイミングで業務をこなせるということは、自分がやる気にならない限り、いつまでも仕事を引き伸ばせるということにもつながります。企業に勤めていれば嫌でも仕事をしなくてはいけませんが、SOHOだと、嫌なら作業をする必要がありません。
そのため、SOHOにおいて自己管理は非常に大切です。仕事があるということは、クライアント側の納期もあります。自分に甘くなってしまうと、それに伴い稼ぎが減ってしまうのも特徴です。
実際の業務以外にも作業がある
SOHOでは、自分からクライアントと接点を持ち、仕事をもらう必要があります。そのため『実際の業務以外にも作業がある』のもデメリットだと言えます。
仕事を獲得するための営業活動もそのうちの一つです。また、報酬の交渉などの経理業務全般も自分で管理する必要があります。本業以外の作業が発生することも知っておくとよいでしょう。
SOHO向け物件とは?

いろいろな側面のあるSOHOですが、個人のオフィスの総称として『SOHO物件』という言葉も誕生しています。
SOHOに向けた物件紹介サイトもある中で、どのような物件が向いているとされているのでしょうか?SOHO物件の特徴についてまとめていきます。
居住契約のオフィス
SOHO物件とは、『居住契約のオフィス』のことを指します。物件には、居住用と事業用の2種類があるのですが、SOHOは居住用で、企業などは事業用として物件を契約します。
そのため、SOHO物件では通常のオフィスと異なり『寝泊まりができる』というのも特徴の一つです。事業用契約をしているオフィスには泊まることができないので、自宅と仕事場を兼ねてSOHO物件を活用しているケースもあります。
自宅と仕事場を合わせることができるため、ベンチャー企業のスタートアップなどにはSOHO物件が選ばれることが多いです。
SOHO物件でできないこと
SOHO物件には、居住契約だからこその注意点もあります。
一つ目が『あくまでも居住用の物件を使っている』という点です。事業用に展開されている物件ではないため、一般の入居者への配慮が不可欠と言えます。そのため、多くの人が出入りする可能性がある職種には向いていないと言えます。
二つ目に挙げられるのが『ネット回線や電話回線の数に限界がある』ことです。もともとが居住用の物件のため、企業に比べるとこれらの環境を整えるのに限界があります。
『看板や表札を設置できない』のが三つ目の特徴です。事業契約ではないため、看板や表札を設置することが許されていません。しかし、表札の場合は、個人名の下に小さく記す程度であれば許されるケースもあります。
メリットとデメリット
SOHO物件のメリットとデメリットは、ほかにもいくつか挙げられます。メリットとして挙げられるのが、物件を借りる際の『初期費用が安い』という点です。
企業として借りる際の事業契約に比べ、居住契約を結ぶため、通常の住居を借りるときと変わらない初期費用で契約することができます。寝泊まりができるため、深夜の作業ができるというのも魅力です。企業では通常、24時間の勤労は認められていません。
デメリットとしては、税金の関係で『法人登記できない』という点があがるでしょう。SOHO、はあくまでも個人事業主であるため、法人登録ができません。法人登録してしまうとSOHOではなくなるので、物件を借りる際の契約方法も事業契約にしなくてはいけなくなります。
SOHOとして働き始めるには

さまざまな業種のあるSOHOとして、実際に仕事を始めるにはどうすればよいのでしょうか?SOHOとして働き始めるためには、いくつか決めておくべきことがあります。自分にあった仕事を長く続けるためにも、始めの準備をしっかりすませましょう。
自分のスキルから業務内容を決める
SOHOには多種多様な業務内容があることを紹介してきましたが、そんな中から自分のスキルを生かせる仕事を見つけるのが、一般的なSOHOの始め方だとされています。
業種は豊富ですが、どの仕事もある程度個人の能力が必要な内容だといえるでしょう。自発的に仕事を獲得する必要があるため、自分のスキルが稼ぎにつながります。自分のスキルであれば仕事を続けられると思える業種を選ぶのがポイントです。
作業環境や屋号を決める
業務内容が決まったら、次に整える必要があるのが『作業環境』と『屋号』です。SOHOの魅力に自宅と仕事場が兼用できるという点を紹介しましたが、もちろん、別々にすることもできます。
その場合、住居とは別にSOHO物件として新たにオフィスを構えることも可能です。自宅だとどうしても仕事ができないという人や、それなりの稼ぎを見込める場合は、そのような方法もありでしょう。
屋号を決めることも仕事を取るためには大切な要素です。できるだけ業務内容がわかりやすいものにすると、クライアント側も仕事を依頼しやすくなるでしょう。
注意点は、会社や法人と間違えられない屋号にすることです。また、商標登録されているものは屋号にできないので知っておくとよいでしょう。
開業届を提出する
SOHOで働くにあたり『開業届』を提出しておくと、後々得することがあります。その一つに、『青色申告』が行えるようになることが挙げられます。
青色申告は白色申告に比べると、控除や赤字の繰越などでメリットが増えます。また、『屋号名の入った口座を解説できる』のもポイントです。
個人の銀行口座と業務用とに分けることにより、クライアントからの入金をスムーズに整理できるため、経理に関する作業がやりやすくなります。
まとめ
昨今のワークスタイルの中で、SOHOの業務内容には注目が集まりつつあります。自分の時間を活かしながら働けるSOHOは、これからの時代ではメジャーな働き方になるかもしれません。
メジャーになるにつれ業務環境や仕事の種類も増えてくるので、今から注目しておくとよいでしょう。