株式会社と合同会社の費用

会社の種類は株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4つがありますが、実質的に設立されるのが多いのは『株式会社』または『合同会社』です。それぞれの特徴と設立にかかる費用を比較してみましょう。
資本金に違いはあるの?
『資本金』は事業をはじめるための元手です。会社の事業力や信用度を測る一つのバロメーターともいえるでしょう。
以前は、会社設立のための最低資本金は株式会社が1000万円、有限会社が300万円とされていました。しかし、2002年の『中小企業挑戦支援法』により資本金制度が免除され、資本金1円から会社が設立できるようになったのです。
『合同会社』も1円から会社設立が可能ですが、『会社を構成するメンバー全てが出資者であること』と定められています。もしメンバーが1人であれば、1円を出資して会社を設立することが可能ですが、メンバー(出資者)が2名であれば、1円×2名、3名であれば1円×3名と、事業を担う全員が資本金を出さなければなりません。
法定金の違いについて
会社設立時は、地元を管轄する『法務局』にて『登記申請』という法定手続きを行います。登記申請にかかる法定金は『登録免許税』と呼ばれ、株式会社、合同会社のどちらの設立時でも納める必要があります。
- 株式会社の登録免許税:15万円または資本金の額の0.7%のうち高い方
- 合同会社の登録免許税:6万円または資本金の額の0.7%のうち高い方
必要な印鑑
会社設立時はさまざまな書類を作成しますが、その際に『実印』という会社の印鑑を押さなければなりません。まずは会社を設立する前に、社名を決めて印鑑を作るのがファーストステップといえるでしょう。『実印』は複製されにくく、ある程度値段のあるものが理想です。
価格は素材や文字数などによって変わり、薩摩本柘は7000円~、黒水牛は8000円~、チタンや琥珀は1万円~が相場です。
そのほかに、銀行口座を設立する際に使用する『銀行印』、契約書類や社内の書類に使用する『社印』、会社名・所在地・電話番号・代表者名が記載された『ゴム印』などを準備する必要があります。
定款の作成費用
会社の基本原則を定めたものを『定款』といい、社内における憲法のような役割を持ちます。法務局で会社登記の手続きをする前に『定款作成』および『定款認証(合同会社は不要)』を済ませておかなければなりません。
まずは、株式会社の定款に関わる費用をみてみましょう。
- 定款に貼り付ける収入印紙代:4万円
- 定款の謄本手数料:1枚250円×ページ数(2000円前後)
- 定款認証手数料:5万円
株式会社の場合は以上の費用がかかりますが、合同会社の場合は『定款の謄本手数料』および『定款認証手数料』は不要で、収入印紙代のみでOKです。さらに、『電子定款』を選択すれば、収入印紙代もかかりません。

榎本希
株式会社の設立にかかる費用は、自分ですべて行う場合には20万円~、合同会社の場合には6万円~となります。
その他に資本金、会社印等を作るための費用や印鑑証明を発行するための費用がかかります。
資本金については1円から可能です。
株式会社の場合、発起人は最低1株以上株式を引き受ける必要があります。
定款作成や登記、設立後の社会保険関係の手続を士業に依頼する場合には各士業への報酬が別途かかります。
業種によっての違い

法人と一口に言ってもさまざまな種類があります。業種によって異なる法人形態があり、優遇される内容が微妙に変わってきます。
農業には農事組合法人という選択肢もある
『農事組合法人』とは、農業を経営する人が任意で選択できる法人形態です。農業従事者が会社を設立する場合、株式会社や合同会社のような『会社法人』にするか、または『農業組合法人』になるかのどちらかが選べます。
『農業組合法人』のメリットは色々ありますが、第一に会社法人設立よりも費用が安い点が挙げられます。(定款認証手数料・収入印紙税・登録免許税非課税などが不要)また、法人事業税・地方特別法人税が不要で、資本金最低額にも特に定めはありません。
一方で、『農業以外の事業ができない』『意思決定は出資口数に関係なく1人1票制』という特徴があり、事業内容や将来的な計画によっては不都合さを感じる場合もあるでしょう。
建設業は建設業許可申請が別途必要な場合が
個人・法人または元請け・下請けに関わらず、『軽微な工事』以外の建設を行う場合は都道府県知事または国土交通省の『建設業許可』を取得する必要があります。建設業許可申請に必要な費用は以下の通りです。
- 都道府県知事:(一般or特定)9万円 (一般+特定)18万円
- 国土交通省:(一般or特定)15万円 (一般+特定)30万円
下請業者として受注する場合は『一般建設業許可』で事足りますが、元請けとして大規模な工事を行う場合で、かつ下請けに出す金額が3000万円以上(建築一式は4500万円以上)の場合は、『特定建設業許可』が必要です。

榎本希
業種によっては会社の設立後に許認可が必要な業種があります。
代表的なものとしては建築業許可や運送業、産廃業、飲食店、美容業などが挙げられます。
自分が行おうとしている業種が許認可の必要な業種であるかどうか分からない場合には行政書士に相談してみると良いでしょう。
許認可と一口に言っても届出と申請があり、提出先も業種により保健所や警察署や市区町村など様々です。
また、業種によっては会社という形態ではなく法人という形態にした方が良い場合があります。
例えば医療法人や農業法人社会福祉法人などが挙げられます。
法人化の費用を安く抑えるコツ

法人化の手続きには時間もお金もかかります。全プロセスを自力で行うこともできますが、場合によっては仕業に代行を依頼したほうが、安上がりでスピーディーに済むこともあります。
電子定款を有効に使う
『定款作成』において、印刷をすると『収入印紙代』が4万円かかりますが、定款を『電子定款』にすれば、収入印紙代はかかりません。
ただし、指定の電子データにするためのソフトウェアを導入しなければならず、実質的には以下の費用がかかります。
- ファイルを作成・編集するためのソフト:3万円~
- ICカードリーダー:2000円~
- 住基カード:500円
- 電子証明書:500円
以上を考慮すると、収入印紙代の4万円とそれほど大きな差はありません。電子定款の作成や認証の手続きに時間がかかる可能性もあるので、方法については状況に合わせて検討していく必要があります。
安い業者を探す
法人化の手続きを自力でやるよりも、専門業者に依頼した方がスピーディーに安く済む場合があります。全プロセスを依頼する方法もあれば、一部の手続きだけを代行する方法もあるでしょう。
たとえば上記の『電子定款の作成』の代行は5000~1万5000円が相場なので、自分でソフトを導入するよりもずっと安上がりです。また、書類の作成のみ業者にお願いし、申請は自分で行うのも安く抑えるポイントのひとつでしょう。
定款認証の代行は行政書士又は司法書士のみ、登記書類の作成・提出代行は司法書士の独占業務となっています。

榎本希
定款作成を行う際、定款には絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項があり、絶対的記載事項については記載がない場合にはその定款は無効となってしまいます。
自分で定款を作成する場合には定款に記載すべき事項に漏れがないかしっかり確認を行うようにしましょう。
定款作成や登記は時間や手間もかかり複雑な部分もあるので確実に行いたい場合には専門家へ相談するのがお勧めです。
なお、定款作成・認証の代行は行政書士か司法書士のみが行う事ができ、登記書類の作成・手続代行は司法書士のみが行う事ができます。上記有資格者以外が行う場合、行政書士法・司法書士法違反となるため代行業者に依頼する場合には注意が必要です。
まとめ
法人化の形態は、よく知られた『株式会社』や『有限会社』だけではありません。合同会社や農事組合法人は、設立費用を安く抑えられるので、条件が合致する際は、選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
また、法人化の手続きは全てを自力でやろうとすると時間もお金もかかります。一部を代行業者に依頼するなどして、労力やコストを程よく削減しましょう。