ゲーミフィケーションとは

年齢問わず多くの人から楽しまれているゲームは、スマートフォンの普及により、アプリゲームとしてさらに広く親しまれるようになりました。
私たちがゲームを継続的にプレイしてしまうのは『楽しい』と思えるからなのですが、なぜゲームは、楽しいと思えるのでしょうか?その仕組みを使っているのが『ゲーミフィケーション』です。
まずは、ゲーミフィケーションについての基本知識についてまとめていきましょう。
ゲームの構造を別の分野で応用する
ゲーミフィケーションとは、『ゲームが楽しいと思える仕組みを別の分野にも応用する』取り組みのことを言います。この言葉自体は2011年頃から使われています。
たとえば、企業が実施しているサービスなどにおいて、ポイントが貯まったりランクが付けられたりするのもゲーミフィケーションを採用している例です。
ゲーミフィケーションという呼び名だからといって、ゲームを作って楽しむというものではないので注意しましょう。
ゲーミフィケーションが注目されている理由
ゲーミフィケーションが近年話題を集めるようになった背景には、どのような原因があるのでしょうか?
その一つと考えられているのが、『インターネット媒体の普及』です。Webを使ったサービスが様々な世代に普及したことにより、ゲーミフィケーションに注目が集まり始めました。
特に、スマートフォンの普及は、オンタイムでネット上の人とつながれるソーシャルサービスの利用を活発化させました。その一つに、アプリゲームも含まれています。ユーザー側からも自発的に働きかけられる媒体に対して注目が集まることで、ゲーミフィケーションの重要性が高まっています。
ゲーミフィケーションのメリット

あらゆる分野で活躍を見せるゲーミフィケーションですが、取り入れることによりどのようなメリットがあるのでしょうか?
ゲーミフィケーションのメリットには、いくつかのメリットがあります。サービスやビジネスにおいても活用できる特徴について、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
自発的に楽しみながら取り組める
ゲーミフィケーションのメリットとして挙げられる一つ目のポイントが、対象者に対して『自発的に楽しみながら取り組めるように促せる』という点です。
サービスを継続的に利用することでポイントが貯まっていくことや、ランクが上がることは、「ポイントを貯めたい」「ランクを上げたい」という意欲を掻き立てます。
これにより、対象者が継続的にサービスを利用するためのモチベーションの向上を促しているのがゲーミフィケーションの仕組みです。この仕組みは、通常だとなかなか興味を持たれないような分野で効果を発揮します。
チームとして目標に向かえる
ゲームが楽しいと感じる理由にはいくつか要素がありますが、その中に『他人との競争や協力』『目標のクリア』という2点が含まれています。
この二つの要素が加わったゲーミフィケーションを採用することで、一つのグループ内において『チームとして目標に向かえる』というのもメリットの一つです。
たとえば、企業内でゲーミフィケーションを採用するとします。何チームかにグループを分け、それぞれの業務実績をランク付けすることにより、グループ同士での競争が行われます。
そして、その競争に勝つためにグループ内でのコミュニケーションは必須の条件となり、必然的に複数人で目標に向かうという姿勢ができあがるのです。
このような活用例は実際にいくつもあり、企業内だけでなく、競合他者同士で実績を開示して、会社単位で目標に向かう姿勢を作り上げている例もあります。
4種類に分けられるゲーマーのタイプ

ゲーマーのタイプには四つが存在します。これらのタイプをすべて満足させられるような仕組みだと、より成功しやすいゲーミフィケーションを作れるでしょう。
4種類に分けられるゲーマーのタイプについてまとめていくので、それぞれのタイプごとの特徴を参考にしてみましょう。
達成に満足するアチーバー
ゲーム内で出される課題にクリアすることで、達成感に満足するタイプのゲーマーが『アチーバー』です。
アチーバーは、クエストや難題・難敵に挑戦することに満足感を得るのが特徴で、クリアすることによって得られる称号や報酬を集めることに喜びを感じます。
先ほど例に挙げたような、サービスにおけるポイント制度などはアチーバーを満足させる方式だと言えます。アチーバータイプの顧客は、ポイントを集めることで得られる報酬に対して喜びを感じるため、サービスを継続的に続けるようになります。
新しい発見に満足するエクスプローラー
新しい仕掛けに満足感を得るのが『エクスプローラー』です。このタイプはその名の通り、探索することを好むタイプのゲーマーです。
新しい発見に対して喜びを感じるため、単調な作業や変化のない報酬の繰り返しに飽きてしまうという特徴があります。
そのため、エクスプローラータイプのゲーマーを満足させるためには、常に新しいと思わせるコンテンツやサービス、報酬が必要になります。仕組みの中で新しい要素が継続的に誕生することで、エクスプローラータイプのゲーマーを引きつけることができます。
他人との交流に満足するソーシャライザー
『ソーシャライザー』は、他人との交流に満足するタイプのゲーマーです。オンラインゲームなどで、他人と協力しながらゲームを進めることに喜びを感じるタイプです。そのため、ほかのプレーヤーから何かを任されたり、協力して難しい課題に挑戦したりすることに満足感を得ます。
ソーシャライザーに分類される人たちは、SNSやネットの掲示板を頻繁に利用するという特徴があります。複数人で協力しなくてはいけない課題を仕組みの中に設定することで、このタイプの対象者の興味を引くことができます。
高い立場に満足するキラー
自分が高い立場にいることに対して優越感を得て喜びを感じるのが『キラー』です。このタイプのゲーマーは、ほかの人と協力して課題をクリアするというよりも、個人で自分のステータスを上げて他人よりも上位にいることに対して喜びを感じます。
上位ランクにいることに喜びを感じるキラータイプは、サービスの継続でランクが上がる仕組みにおいて、誰よりもランクが高いということに満足します。そのため、他人との違いがわかりやすい報酬を仕組みに入れるとキラータイプの対象者を引きつけられます。
ゲーミフィケーションを構成する要素

ゲーミフィケーションを効果的にするために、対象者の特徴についてまとめてきましたが、実際にゲーミフィケーションを作るときには必須となる四つの要素があります。
どれか一つが欠けてしまうだけで仕組みが効果的に機能しない可能性もあるため、ゲーミフィケーションを構成する五つの要素について具体的にみていきましょう。
明確な目標
ゲーミフィケーションを組み立てる上で、まず用意する必要があるのが『目標』です。
ゲーミフィケーションを採用する中で明確な目標を定めることで、対象者がなんのためにゲームをしているのか分かりやすくする必要があります。
これは、サービスにおいても同じことが言えます。特定のサービスを受けている顧客が、なんのためにそのサービスを受け続けているのか明確でない限り、顧客が継続してサービスを利用することはありません。まずは明確な目標を設定し、ゲーミフィケーションの意味づけを行うことが大切です。
課題と報酬
ゲームは、クリアするべきクエストとクリア後にもらえる報酬があるからこそ楽しめます。これはゲーミフィケーションでも同じで、対象者の意識を引き続けるためには『課題』と『報酬』を用意することが非常に大切です。
報酬がもらえるということは、継続して何かを続けるためのモチベーションに繋がります。課題を設定する時のポイントは、『いきなり難しくしない』ということです。
初めから難しい課題が設定されてしまうと、報酬を手に入れるまでが大変になってしまいます。いきなり難しい課題を設定するのではなく、まずは簡単にクリアできる課題から用意して、対象者にクリアする喜びと報酬を得る満足感を体感させることがポイントです。
現状の可視化
対象者に向けて『現状の可視化』を行うこともとても大切です。現状の位置がわかることによって、目標達成までどのくらい進んでいるのかが分かりやすくなります。
課題をクリアするまでの距離がわかりやすくなることで、対象者のやる気や継続する意欲が変わってきます。
ポイントやランクなどは現状の可視化として分かりやすい例です。「どのくらいサービスを利用することでこれだけのポイントが貯まる」ということが可視化してわかることにより、『成果』がモチベーションにつながるようになります。
フィードバック
可視化した現状を対象者に向けてしっかりと『フィードバック』することも必須です。フィードバックを行わなければ、上記で紹介した可視化したものも無意味に終わってしまいます。
可視化することでユーザーに現在の成果を提示できるため、現状の可視化とフィードバックは二つで一つの欠かせない要素です。
ゲーミフィケーションの事例

ゲーミフィケーションが活用されているシーンはたくさんありますが、中でも成功を上げている実例について紹介していきます。
飲食店やスポーツブランドなど、ジャンルもさまざまなので、どのようなそれぞれの事例の特徴をおさえていきましょう。
くら寿司のビッくらポン
大手チェーン店の『くら寿司』で採用されている『ビッくらポン!』も、ゲーミフィケーションを活用している例の一つです。
ビッくらポンは、寿司の皿5枚ごとに一回ガチャポンをひけるという仕組みになっていて、子どもたちから人気を集めています。
この仕組みを作ったことにより、顧客は、5枚区切りで寿司を食べるようになります。家族全員でお皿を集計したとき、あと1枚で1回ガチャポンを回せるとなったら、どうしてももう1枚注文してしまうという仕組みです。
ゲーミフィケーションを活用することにより、成果を売り上げに直接結びつかせた好例です。
NKEのNIKE+
大手スポーツメーカーの一つである『NIKE』でも、ゲーミフィケーションを使ったサービスが誕生しています。それが『NIKE+』です。
このサービスは、ランナーを支援する目的で実施されているもので、日々のランニングの記録をSNSで投稿できる機能も搭載されています。また、世界中のランナーとタイムを競い合う機能も搭載されているため、ランニングに対するモチベーションの向上にもつながります。
日本コカ・コーラのハピクエ
飲料メーカーとして有名な『コカ・コーラ』でもゲーミフィケーションが活用されています。その一つが『ハピクエ』というサービスです。
これは、2011年から全国の自動販売機を使って実施されているプロモーションの一つで、自動販売機に貼られているQRコードを利用してサイトに飛ぶと、自動販売機とコミュニケーションを取ることができるという珍しい試みです。
特定の自動販売機と継続してコミュニケーションを行うことで特典を獲得でき、特別なバッチも与えられるという報酬が用意されています。それにより自動販売機のリピート率を上げることに成功した実例です。
人材教育における事例

企業のサービスだけでなく、人材教育の場面でもゲーミフィケーションは活躍しています。どのような事例があるのか見ていきましょう。
接客を体験させるHilton Garden Inn
ヒルトングループが経営する『Hilton Garden Inn』では、新人の研修に向けた『接客を体験させる』ゲーミフィケーションが採用されています。
擬似接客を体験できるゲーム仕様になっていて、対象者は、顧客の質問に答えてポイントを積み重ねていくといった仕組みです。
基本的なシーンに対応する知識が得られるのに加え、通常では起こりにくいシチュエーションを想定して研修できるのも魅力的です。
安全訓練に利用したウォールマート
アメリカで最大級のスーパーマーケット『ウォールマート』では、配送センターの安全訓練にゲーミフィケーションを採用しています。
ゲーム性のある訓練により、従業員の安全に対する意識が変わり、インシデントが54%減るという結果を出しました。
入社体験ができるロレアル
フランスの大手化粧品メーカーであるロレアルでは、大学生に向けた企業独自のオンラインゲームを展開しています。このゲームでは、ロレアルでの業務体験ができ、プレーヤーはゲーム内で新たな広告やプロジェクトの立ち上げを行います。
人材発掘が目的ですが、全世界から多くの参加者を集め、ロレアルの化粧品に対して興味を抱かせるきっかけにもなりました。
ゲーミフィケーションを体験できるアプリ

ゲーミフィケーションがどのようなものなのか、実際に体験できるアプリも誕生しています。それぞれのアプリごとに目的が異なるため、ゲーミフィケーションの多様性が伺えます。
中でも人気のアプリについて紹介するので合わせてチェックしていきましょう。
言語学習アプリDuolingo
Appleの年間ベストアプリにも選ばれた実績を持つのが『Duolingo(デュオリンゴ)』です。このアプリでは、ゲームを楽しみながら言語を学習できます。問題に正解するとポイントが貯まり、不正解だとライフポイントが減るという仕組みで、ポイントが上がると報酬を獲得できます。
報酬を獲得できるという点がゲーミフィケーションを活用している要素で、報酬獲得を目標に自然と言語を覚えていくというのが魅力的です。
スマホ中毒防止になるForest
ゲーミフィケーションを取り入れることで、スマホ中毒を防止する効果を発揮してくれるアプリが『Forest』です。
このアプリでは木を育てるのですが、タネを植えてから30分間の間にほかのアプリを使ってしまうと、気が枯れるという仕様になっています。スマホ依存症という言葉が話題になっている昨今、このような依存防止アプリに対する注目度が上がってきています。
木をたくさん生やしたくなる可愛らしいデザインなので、ついついスマホを眺めてしまうという人にぴったりのアプリです。
まとめ
ゲーミフィケーションは、私たちの日常に溢れていて、インターネットの普及により今後ますます注目されると考えられます。ゲーミフィケーションの特徴を今のうちから捉えておき、自分のビジネスや企業の教育などで採用してみるとよいでしょう。