ガントチャートとは

これまで企業におけるプロジェクトに関わった経験があれば、ガントチャートに従って作業を進めてきた人も多いでしょう。しかし、自分で一から作るとなったとき、これまでのテンプレートを流用してなんとなく作っていては、ガントチャート本来の役割を果たせないかもしれません。
作ることが無駄な作業の一つになってしまわないためにも、ガントチャートが何を目的に作られるものなのかを明確にしておくことが必要です。
プロジェクトの工程表
ガントチャートとは『プロジェクト全体の工程表』で、工数・スケージュール・タスクなどのプロセスを一元管理するために考案された手法の一つです。プロジェクトを納期までに遂行するためには、綿密なスケジュール管理が重要となってきます。
すべての作業を一人で行うのであっても、一定の期間を必要とする作業であれば工程表が必要でしょう。チームで作業にあたるとなれば、工程表の重要性はさらに増すのは当然のことです。
作業内容の把握と進捗管理を行う
ガントチャートの特性は、作業の内容および進捗を『可視化』することで、一目でプロジェクト全体の状況を把握できることです。
各メンバーや各部署がそれぞれ立てた計画通りに作業を進められれば、プロジェクトの流れに問題はないかもしれません。しかし、これだけでは今どの工程にあるのかチェックするのに非常に時間がかかります。
思わぬ事態により計画が崩れることもあれば、報告を受けるような目立った問題がなくとも計画からずれていくこともあるでしょう。こうした場合にも管理者は納期に間に合うよう素早く対応し、進捗を管理することを求められます。ガントチャートは、現状を常に把握しておくために欠かせないツールといえるでしょう。
作成過程で計画を検討できる
メンバー・日程・手順を頭の中で組み立てたあと、ガントチャートとして書き出していくと、不要な待ち時間が生じたり、作業が集中してしまったりする部分に気づくこともあります。過去の実績を振り返ってガントチャートが適切であったかどうか確認すると、ときには作業量や日程に問題のある部分も出てくるでしょう。
また、すべての工程を管理する立場であれば、突然のトラブルなどのあらゆる事態を想定しておく必要があります。ガントチャートを作成する過程では、あらためて計画に無理が生じていないか確認し、再検討する機会が持てるのです。
手帳やアプリなど個人ユースも増加
多くの人が関わるプロジェクトではもちろんですが、個人事業主や自分の作業のみの管理を行いたい人にもガントチャートの作成はおすすめできます。どの作業をいつまでに終わらせるか、スケジュールに無理がないか、細かな進行管理を行うのに便利です。
実際にガントチャートを作成している人も増加しているため、作成に便利な手帳やアプリも多く見かけるようになりました。ガントチャート式になった表にササっと書き込むだけで簡単に工程がわかります。複数の作業を1人でこなす必要があれば利用してみてはいかがでしょうか。
作成する目的と効果

プロジェクトを管理する立場の人にとって、ガントチャートは欠かせないものです。その目的は計画初期から全行程を管理し、メンバー全員に周知することにあります。
では次に、ガントチャートを作成することで期待できる効果について考えてみましょう。
メンバー間での進捗共有が可能
管理者だけではなく、メンバー全員に全体が見えているのと見えていないのとでは、プロジェクトの進捗に大きな違いを生じさせるでしょう。プロジェクトに期日があるように、各工程にも期日があり、計画の要点を全員が共有しておく必要があります。
各メンバーが自分の関わる作業のみに集中し、全体の流れを把握していないと生産性を低下させる要因にもなりかねません。ガントチャートがあれば、全員がプロジェクトの進捗状況を把握できます。開始時点で作業工程について、管理者や他の部署との細かい連携を取れるようになるでしょう。
遅延やトラブルを把握できる
すべての作業が順調に進めば問題ありませんが、一つのプロジェクトを進めていくなかで遅延やトラブルが起きることも当然予測されます。ガントチャートが適切に運用されていないために、対応が遅れる可能性を残したままにしておくことは、リスク管理が不十分だといえるでしょう。
プロジェクトに関わるすべてのメンバーが、ガントチャートにより進捗状況を共有していれば、各部署で素早くフォローしていくことも可能になるのです。
作業負荷の偏りや漏れを防ぐ
ガントチャートは『進捗率』や『工数』を入力できるフォーマットにしておくことをおすすめします。進捗率は、プロジェクトが計画通りに進んでいるのか確認し、逐次改善するのに役立つでしょう。
また、プロジェクトには計画原価があります。工数を把握しておくことで、原価内で作業を完了させられるのかがわかるのです。一部の担当者にだけ偏った負荷がかかっていないか、もしくは余力を残していないかを全員が把握できると、事前にミスを防ぎ、全体の無駄を省くことが可能になります。
計画スケジュールに対するズレを把握
実際の仕事では、各メンバーが複数のプロジェクトに関わることも多々あります。1日の労働時間をそれぞれのプロジェクトに振り分けていたとしても、計画工数通りに進んでいるとは限りません。
納期をずらすわけにはいかないため、ずさんな管理のまま作業を進めて行けば、後の工程に関わるメンバーに大きな負担をかけることになるでしょう。
プロジェクトの期日に間に合わせるためには、進捗率を把握しておく必要があります。作業に遅れが出ていることがわかれば、現状を把握して改善方法を考える必要があります。
ガントチャートは計画工数と実績工数のズレをチェックするのにも便利です。メンバーにとっても、計画工数通りに進めようという意識を高める材料になるでしょう。
ガントチャートを機能的に使うコツ

パッと見て全体を把握しやすいガントチャートを採用する企業の数は少なくありません。しかし、実際の現場ではガントチャートが「使えない」と思われていることもあるようです。
ガントチャートを適切に運用するには何が大切なのか見ていきましょう。
必要なタスクを網羅する
どれも省かず『必要とされるタスク』はすべてガントチャートに表示されているのが理想です。細かい部分だからと省いてしまうと、全体の工数の管理もできなくなってしまいます。
タスクの洗い出しには、WBS(Work Breakdown Structure)と呼ばれる作業分解構成図を作成するといいでしょう。プロジェクトに関わる作業を細分化して管理するための構成図です。具体的には後の項目で解説していきます。
ガントチャートは単体で作るというより、このWBSを作ったうえで作成されるものだと考えてもいいでしょう。
最新状態を保つ
エクセルでガントチャートを作成し、あちこちにコピーができてしまうと『最新の状態』がわからなくなってしまうことがあります。エクセルの場合は保存場所を決めておき、コピーを作らないようにしておく必要があるでしょう。
また、作業に追われてガントチャートの更新を怠ると、ほかのメンバーや管理者が把握しているものと実際の進捗にズレが生じてしまいます。こうなっては誰もガントチャートを見ることもなくなってしまいます。
適切に運用していくためには、1つのガントチャートをメンバー全員が共有し、マメに更新していくことが重要といえます。
ガントチャートを作る前に

タスクの追加・スケジュールの変更・ガントチャートの修正など、余分な仕事が増えないようにするためにも、作成前にできるだけ細かく計画を詰めていく必要があります。
プロジェクトのゴールを明確にする
どんなプロジェクトにもゴールがあるはずです。それは『納期』であったり『イベント日』であったりするかもしれません。しかし「いつまでに何をするのか」という共通認識がある点では、どのプロジェクトも同じです。
このゴールが曖昧なま計画を進めてしまうと、作業工程におけるメンバーのイメージもそれぞれ異なり、修正に多くの時間を取られる可能性があります。最終的にどんなものができあがっていればいいのか、ゴールは誰の目にもわかるよう明確にしておきましょう。
達成のための作業を分解
まずはざっと目的を達成するために必要なタスクを洗い出してみましょう。業務内容によって用語はいろいろあると思いますが、たとえば『設計』『テスト』『実装』などの段階に分けます。この分解されたものが前述したWBSです。
さらにその作業の中で『設計その1』担当者は誰々、『設計その2』担当者は…といった具合に細かく分けていきましょう。
ただし、あまりに細かすぎてもガントチャートが見づらくなり、全体の把握ができなくなってしまいます。管理者もメンバーも情報の共有がしやすい最適な細かさを見つけてください。
関連する作業を明確にする
タスクを分解することで『関連する作業』を明確にできます。この分解作業がおおざっぱすぎると、プロジェクトの途中で必要タスクの漏れに気づくことがあります。そのタスクで実際何をするのか、工数はどのくらいかかるのか、細かく落とし込むことで実行可能な計画を立てられるのです。
また、ガントチャートは特に大人数が関わるプロジェクトの管理に向いているといわれています。あらゆる関連作業が明確にされていることで、メンバー全員がタスクの相関関係をわかりやすく共有できるでしょう。
ガントチャートの作り方

ガントチャートを作成する意義や事前準備についてわかったところで、さらに具体的な作成項目について見ていきましょう。
作業項目、成果物、日程を洗い出す
ガントチャートを作成する準備を終えた時点で、次の項目がはっきりしているか確認をしましょう。
- 作業項目(各タスク)
- 各タスクにおける成果物
- 各タスクの担当者
- 成果を上げるまでの日程
ガントチャートでは左側にタスクが列記されたツリー構造があり、孤の中に作業項目とそこから分解された成果物(目標)と担当者を記入します。右側には日付とチャート図によってスケジュールを表すため、作業の開始日と完了日を定めておく必要があります。
マイルストーンを設定する
何か大きな目標に向かうとき、作業を細かく区切って「何日までにここまでやる」と決めて計画を進めた経験はないでしょうか。これが『マイルストーン』です。プロジェクト全体の流れの中に置かれたチェックポイントと考えましょう。
マイルストーンを設定しておくことで、そこまでの作業が計画通り進んでいるかどうかの道しるべの役割を果たすのです。外部関連のものであってもプロジェクトに関わる重要な日付は同様に設定しておきましょう。
ガントチャートでタスクも日程も管理されているのに面倒だと思うかもしれません。しかし、節目の作業を確認できるため、管理者にとってはプロジェクトの進捗具合を把握しやすくなります。
また、重要な期限がはっきり示されていることで、プロジェクトメンバーにとっても作業効率を上げる効果が期待できるといえるでしょう。
クリティカルパスを確認
タスクの相互依存関係について明確にしておくことが、プロジェクトを順調に進めるための重要なポイントとなります。WBSによって分解されたものを『ネットワーク図』として展開してみると、それがよくわかるでしょう。
ネットワーク図とは、計画の始まりから、最下層のそれぞれのタスクまでラインで繋ぎ、工数を出したものです。たとえば1のタスクが遅れれば、その後に続く2や3のタスクにも遅れが生じるでしょう。
ネットワーク図により最も時間がかかるとわかったラインが『クリティカルパス』です。ここで遅れが生じるとプロジェクト完了日に影響が出るため、重要な管理が必要とされます。
Officeソフトでガントチャートを作成

ガントチャートは身近なOfficeソフトで作成できます。主な2つのソフトと利点について解説しましょう。
エクセル
オフィス系ソフトの代表格でもある『エクセル』は、プロジェクトマネジメントに関わっている人の大多数が使っていると思います。ガントチャートを作るのが初めてなら、とっつきやすいエクセルから挑戦してみてはいかがでしょうか。
グラフ機能でチャートも簡単に挿入でき、項目の増減も手軽に行えます。表計算ソフトならではの関数やマクロを組み込んで、自分の好きなようにカスタマイズすることも可能です。
テンプレートも豊富
ほかのさまざまな表と同様に、ネット上にはガントチャートの無料エクセルテンプレートも豊富に存在します。エクセルには自信がないという人でもできる、開始日と完了日を入れるだけで済むものも、マクロやVBAが得意な人であれば、ごくシンプルな形式だけのテンプレートもあります。
どの程度の機能が備わっているかはテンプレートによって大きく異なるため、自分の目的に合ったものをダウンロードして使うといいでしょう。下記はマイクロソフト社のテンプレートです。
パワーポイント
アドインを登録するだけであらゆる資料作成をこなせる、オフィス系万能ソフトともいえる多機能な『パワーポイント』でも、もちろんガントチャートが作成できます。
デフォルトのままでも作成不可能ではありませんが、一つずつ作成していくのは手間がかかりすぎるでしょう。
おすすめなのは『Office Timeline』というアドインです。プリセットされたテンプレートの中から好きなものを選び、項目を設定するだけでガントチャートが作れます。
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フリーで使えるガントチャートサービス

インストールするだけで便利に使えるガントチャートサービスを3つ紹介します。
Redmine
『Redmine』ではタスクのことを『チケット』と呼んで管理します。登録されたチケットは、フィルターを使用して担当者ごとに表示もできるため、自分のチケットを確認するのに便利です。
他にも、スケジュールに変更が生じた場合、WBSでいう最下層タスクのリスケはさほど大変ではありませんが、まだ計画初期のリスケとなると、そこに関連するタスクすべてについてチャートの修正をしなければいけません。
Redmineが導入されていれば、修正が必要な部分のチャートをドラッグ&ドロップするだけで簡単に移動できます。
Jooto
『Jooto』は進捗管理、スケジュール調整などの基本的な機能のほか、タスクフィルターを利用して担当者ごとに任されているタスクを全員が簡単に確認できます。
また、ダッシュボード機能を使えば、自分だけのタスクをまとめる『マイタスク』や、プロジェクトの進捗状況が表示される『プロジェクト』で簡単に現状把握が可能です。
みんなでガント.com
『みんなでガント.com』は初めてガントチャートを使う人でも扱いやすいサービスです。オンラインサービスなので、外出先でも自宅でも、インターネットが使える環境にあればいつでもガントチャートを確認できます。変更が生じたときにどこからでもすぐに対応・共有を可能にします。
複数人が一度に編集を加えても対応できるため、ほかのメンバーが閲覧を終えるまで待つ必要もありません。
プロジェクト管理に。無料ガントチャート共有サービス|みんなでガント.com
まとめ
ガントチャートの大きな役割とは、管理者だけでなくプロジェクトメンバー全員が、タスクの重要性や進捗状況を把握することにあります。有効に利用されるためには、過不足なくタスクを洗い出し、クリティカルパスを注意深く確認し、マイルストーンを設定しておく必要があるでしょう。
イチから作成するのが面倒であれば、便利なガントチャートサービスを利用するのもおすすめです。