請求書の基礎知識

請求書はなぜ発行するのでしょうか?クライアントによっては請求書の発行を義務付けていない場合もありますが、個人事業主でも発行する必要があります。
まずは請求書を発行する目的など、基礎知識から説明していきます。
請求書の目的
請求書を発行する目的は、『クライアントに支払いを請求したことを、書類として残すため』です。クライアントによっては請求書を発行せず、「メッセージや口頭でのやり取りでも構わない」という人もいるでしょう。
しかし、書類として残しておかなかった場合、クライアントに「報酬の支払いを請求されていない」と言われたときに、証明するものがありません。
請求書があれば、相手先の支払いが滞っていても時効になりませんが、口約束のみで、請求書を作成しなかった場合、時効となり報酬が受け取れないまま取引が中断してしまうこともあるのです。
とはいえ、請求書は発行していなくてもクライアント側にペナルティーが課せられるわけでありませんから「請求書はなくてもよい」と考えている人も少なくありません。
しっかりと報酬を回収するためにも、『請求書は必ず発行しておくべき書類』と考えておきましょう。
個人事業主でも発行する必要がある
個人事業主の場合、「自分で管理さえしておけば、請求書は発行しなくてもよい」と考えている人もいるでしょう。しかし、副業でも個人事業主でも、報酬をきちんと受け取るためには請求書の発行が必要です。
特に、個人事業主にとって『請求書』は、確定申告をするときに源泉徴収がされたかどうかを確認するための書類でもあります。通帳の入金履歴だけでは源泉徴収された額なのか、そうでない額なのかが分からないので、二重課税となる可能性があるのです。
二重課税となれば、損をしてしまいます。請求書は必ず発行して保管しておくという習慣を付けましょう。
請求書作成のメリット

請求書は、支払いを請求したことを書類として残しておくこと以外にもメリットがあります。請求書は必要と分かっていても、月末・月初の忙しい時期に発行するのは誰でも面倒に感じるでしょう。
しかし、請求書を発行するメリットを知れば、少しの手間を惜しんででも発行すべきと分かるはずです。請求書作成のメリットを二つ紹介します。こちらも忘れず目を通しておきましょう。
請求漏れ防止
請求書を発行せず、メッセージや口頭でのやり取りで済ませていると、『請求漏れ』をする可能性があります。振込日になっても振り込まれていないことに気が付かず、請求するのを忘れて数カ月そのままになっていたという話も少なくありません。
しかし、振込日から日にちが経ち過ぎていると、クライアント側も「何の話か覚えていない」と忘れている危険性もあり、そのまま報酬がもらえずじまいということもあるのです。
そこで、『請求書を発行して、自分の決めたタイミングで入金を確認する』ようにしておきましょう。こうすることで、後になって気が付くというミスを防げます。
請求書をまとめて管理しておけば、メッセージのやり取り履歴を探すよりも、チェックする時間が各段に減らせます。請求漏れをしてしまうと、自分の不利益につながります。振込されるまでが業務と捉え、確実に確認できるようにしておきましょう。
トラブル回避や備え
クライアントとのトラブルで多いのはお金絡みの内容です。下記のような事柄が、金銭面でのトラブルの内容として多く挙げられています。
- 振込日を過ぎても入金されない
- 入金された額が間違っている
- すでに入金済みと言われる
これらの、トラブルは請求書を発行していれば回避できるものです。たとえば、入金された額が間違っていたときは、発行済みの請求書をもう一度クライアントに提出して、入金履歴と一緒に確認してもらえば入金額が違うことを証明できます。
「すでに入金した」と言われる場合も、先月の振込と勘違いしている場合が多いのです。その際も、これまでの請求書があればすぐに対応できるので安心できます。
これらのトラブルは必ず起こるわけではありませんが、回避する備えとして請求書は必ず発行しておくのがおすすめです。
請求書の記載事項

請求書の記載事項は決まりがあるわけではありません。そのため、初めて自分で発行する人は何を書けばよいのか戸惑ってしまうことでしょう。
そこで最低限入れておくべき記載事項をまとめました。請求書作成時の参考にしましょう。
宛名や自分の情報
請求書は、『誰から誰宛に発行したか』を記載する必要があります。そのため、相手の会社名や担当者名と自分の情報を記載しましょう。記載例を下記にまとめました。
- 宛名:〇〇株式会社 〇〇様、株式会社〇〇 〇〇部 〇〇様、〇〇有限会社御中 など
- 自分の情報:氏名+住所+電話番号
宛名が分からない場合は、クライアントに確認するのがベストです。自分の住所の電話番号は固定電話ではなく携帯番号でも構いません。名前が読みにくい場合は読み仮名を付けておくと親切です。
請求番号や発行日
請求書を自分で管理するときに、請求番号があった方が便利です。月1〜2枚しか発行しないのならそこまで重要ではありませんが、5枚以上発行する場合は、どの請求が終わっているかを管理するのに、請求番号を付けておくことで、リスト化しての管理がしやすくなります。
番号の付け方にルールはないので、「2019年3月31日発行→20190331」のように自分が管理しやすい番号で問題ありません。
また、いつの分の請求書か分かるように発行日を記載しておく必要もあります。このときの日付は自分が請求書を発行した日付ではなく、クライアントの締め日になるので事前に問い合わせて確認しておきましょう。
請求内容と金額
どんな作業に対していくら支払ってもらうのかが分かるように、請求内容と金額を記載しましょう。請求内容の例は下記の通りです。
- 請求内容:美容記事執筆代、アイコンデザイン代、イラスト作成代など
請求内容の書き方はクライアントから指定される場合もあるので一度確認しておきましょう。1件ごとの金額は税抜表示にして、小計と消費税、税込合計を別で記載すると分かりやすい請求書になります。
源泉徴収を行う場合は、源泉徴収額も記載するのを忘れないようにしましょう。
振込先や支払い期限
振込先が記載されていなければ、振込ができません。間違いのないように記載しましょう。振込先として記載する情報は、「金融機関名・口座の種類・支店名・口座番号・口座名義人」です。
また、支払い期限も記載します。「期限が書いていないからいつでもよい」とクライアントに思われてしまわないよう、忘れずに記載しておいてください。書き方は「〇月〇日」「〇月末」のどちらでも構いません。
知っておきたいポイント

請求書に記載する事項を理解したら、次に知っておきたいポイントも頭に入れておきましょう。請求書を作成するときに迷いやすいポイントを四つにまとめたので紹介していきます。
小数以下の消費税
請求書に金額を記載するとき、消費税を入れると金額によっては小数点以下の数字が出る場合があります。「小数点以下は繰り上げ」と考えている人もいますが、『請求書を作成する場合、小数点以下は切り捨て』と国税庁が決めているので注意しましょう。
たとえば、5610円に消費税8.0%をかけると6058.8円になりますが、6059円ではなく6058円になるということです。クライアントの計算額と自分の作成した請求書の額が1円単位で違う場合は、消費税が切り捨てになっているか確認してみましょう。
送り状や鏡の書き方
請求書を郵送でクライアントへ送る場合、請求書と一緒に送り状や鏡を入れるのがマナーです。請求書だけ入れて送ると、相手にそっけない印象を与えてしまうので注意しましょう。送り状や鏡に記載する内容は下記の通りです。
- 送付日:請求書を送る日付
- 宛先:送り先の会社名や担当者名
- 送付者:自分の名前
- 連絡先:自分の住所や電話番号
- 件名:「請求書のご送付」と記載
- 書類の概要:請求書を送付することが分かる文章
- 送付枚数:送り状または鏡と合わせた枚数
- 挨拶文:「前略 平素は、格別のご愛顧を賜りまして誠にありがとうございます。請求書を送付いたしますので、ご査収の程よろしくお願いいたします。草々」など
押印について
請求書は押印が必須ではありませんが、あった方がトラブルを避けられます。なぜなら、印鑑が押してある請求を偽造すると刑罰が重くなるからです。
印鑑がない場合は10万円程度の罰金で済んでしまうので、簡単に偽造されないようにするためにも請求書には印鑑を押しておきましょう。使用する印鑑の種類は、丸印・銀行印・角印・データ印(ネットで作成した印鑑を印刷したもの)のどれでも構いません。
分割払いについて
請求書の支払額が大きい場合、一括払いではなく分割払いになるときもあります。その場合は通常の請求書の記載事項にプラスして下記の内容も記載しておきましょう。
- 支払方法:〇回分割(第1回請求金額〇〇円、第2回請求金額〇〇万円)
- 支払期限:第1回 〇〇年〇月〇日 第2回 〇〇年〇月〇日
分割で払うことが書かれていないと、1回目の支払いで終わってしまう可能性があります。日付も確実に入金してもらうために記載を忘れないようにしましょう。
分割払いの場合の支払日は自分で勝手に決めず、必ずクライアントと話し合ってから決めることが大切です。
作成や発行後に確認すべきポイント

請求書は一度作成すると簡単に訂正ができません。請求書の不備や発行後のトラブルを防ぐためのポイントをまとめましたので紹介します。
記載内容の確認
記載内容に間違いがないか、作成が完了した後に必ず確認をしましょう。まず、作成直後に2〜3回読み直し、余裕があれば翌日に再度確認してから相手に送るのがおすすめです。
特に、自分の情報は入力に慣れているので間違えやすい項目です。何度も確認して不備がないようにしてください。
金額の確認
金額の間違いは多くても少なくてもトラブルの原因になります。間違って少なく記載してしまった場合、差額を支払ってもらえない可能性もあるので注意しましょう。こちらも記載内容の確認と同じく2〜3回確認するのがおすすめです。
送り先の確認
せっかく作成した請求書も、送り先が間違っていては相手の元へ届きません。郵送であれば相手の住所を、メールの場合は、メールアドレスをしっかり確認しておきましょう。
メールの場合は送ってすぐに送信済みボックスに入っているかどうか確認する癖を付けておくと安心です。
入金の確認
請求書の作成方法
請求書に記載する内容や注意事項が分かったら、次はいよいよ作成に入りましょう。請求書の作成方法には大きく分けて2種類あり、それぞれ簡単に説明していくので参考にしましょう。
エクセルなどで自分で作成
請求書の作成方法の一つ目は、エクセルなどを使って自分で作成する方法です。エクセル作業に慣れている人はこの方法の方が早いですし、自分で項目を自由に決められるのもメリットになります。
ただし、エクセルに慣れていなかったり、レイアウトが苦手だったりする人は作成に時間がかかってしまうでしょう。請求書の作成に時間をかけるのはもったいないので、自分で作成する自信がない人は次に紹介する方法がおすすめです。
作成サービスやソフトを活用
もう一つの作成方法は、請求書の作成サービスやソフトを活用する方法です。データやソフトをパソコンにダウンロードする必要がありますが、宛名や金額など必要な項目を入力するだけなので、レイアウトを自分で考える必要はありません。
記入漏れがなく、記載されているやり方に沿って入力するだけなので初心者でも比較的簡単に作成できます。
請求書作成ソフトやアプリの選び方

請求書作成ソフトやアプリはいろいろなメーカーからリリースされています。どれを選ぶかで請求書作成にかかるコストが変わってくるので、選び方のポイントをまとめてみました。
入力のしやすさや郵送代行
請求書は入力する項目が多いですし、人によっては毎月何枚も作成しなければならないこともあります。入力に手間がかかるソフトやアプリでは請求書作成に時間がかかってしまうので、できるだけ入力しやすいと感じるものを選びましょう。
また、サービスの中には郵送代行をしてくれるものもあります。郵送で送る場合、郵便局へ行ったりポストを探したりするのは意外と面倒なので、郵送代行があるソフトやアプリを選んで時間を短縮するのも一つの方法です。
請求書作成以外の機能
もう一つのポイントは、請求書を作成する以外の機能があるかどうかに注目することです。
- 請求書作成をスケジュール管理できる
- 一度作成したデータを保管してくれる
- 売上金を管理してくれる
- 振込を催促してくれる
このように、便利な機能はたくさんあります。請求書を作成するだけでなく、そのほかの機能もあった方が日常業務も楽になるので、このポイントも忘れず確認してソフトやアプリを選びましょう。
有料か無料か
請求書作成のソフトには有料のものと無料のものがあります。有料のものの方がサービスが充実している場合が多いのですが、だからと言って全ての人に有料のものが合うというわけではありません。
まずは、請求書が作成できる機能だけでよいのか、それともその他の機能も欲しいのかを考えてみましょう。その上で必要な機能が入っているソフトやアプリをいくつか探し、有料でも支払うメリットがあるかどうかを考えると自分に合うものが選べます。
まとめ
請求書は支払いを滞らせないようにするために必要な書類です。たとえクライアントの方で義務化されていなくても、必ず作成しておくことで支払いに関するトラブルを防げます。
また、請求書を作成するときは不備がないかどうかを確認してから送付しましょう。相手によっては修正ができない場合もあるので、「どこかにミスがあるはずだ」という気持ちで繰り返しチェックするのが大切です。