
【副業人材によるフレキシブルな開発組織】業界特化型BtoBプロダクトの組織運営と採用戦略
エンジニア 伊藤 聡史氏
副業人材が中心の開発組織
ーー:御社ではなぜ積極的に副業人材を採用されているのでしょうか?
伊藤氏:まず弊社の開発体制からお話したいと思います。
弊社はMI(Materials Informatics)という業界以外の方にはなかなか聞き慣れない手法を用いて事業を展開している会社です。弊社がターゲットとする素材産業は市場規模が世界で550兆円と非常に大きく、そのうち106兆円を日本が占めており、日本が世界をリードできる数少ない産業の1つです。
ここにAIをはじめとした先端技術を用いることで、化学・素材メーカーを中心とする素材研究開発を効率化することを目指しており、2020年4月に解析ソフトウェア「miHub」(SaaS)のクローズド版をリリースしました。
そして自社プロダクト「miHub」に関わるメンバー構成は、以下になります。
機械学習エンジニア4名のうち3名はOffers経由で採用
ーー:ほぼ全員が副業人材ですね!
そうですね。このような背景にはプロダクト開発が初期段階ということもあり、方向性が定まりきれていないところもあります。それにBtoBの業界特化型であることや、素材産業という馴染みが少ない業界でもあるので、弊社に来て欲しいと思っても認知度を含めさまざまな課題がありました。
そこで優秀層を採用するためにも、まずは副業で入っていただき、仕事の面白さややりがいを知ってもらった後に、正社員化していく方針を取っています。
MI-6株式会社 伊藤氏(写真左)
採用のポイントは技術マッチとカルチャーマッチ
ーー:ちなみに伊藤さんも副業から正社員になったそうですね。
伊藤氏:はい、私がジョインしたときには正社員のエンジニアが一人もいませんでした。その当時からプロダクトの企画段階からディスカッションに参加し、課題の抽出や改善策の検討、さらに実際にコーディングまでやっていました。
正社員になってからは、先ほどのタスクに加えて、エンジニア採用や副業メンバーのマネジメントもやっている状況ですね。
ーー:副業人材の採用のポイントを教えていただけますか?
伊藤氏:技術マッチも大事ではあるのですが、カルチャーマッチもかなり大事にしています。弊社では副業の方とはいえ、社内の議論まで入っていただきたいんです。そういう意味で、技術だけではなくてカルチャーフィットも大事にしています。
先ほども触れましたが、弊社は業界に特化したBtoBビジネスを展開しています。エンジニアは人によってエンタメやBtoCという華やかなことがやりたい方もいますよね。ですが弊社の業界は堅実です。
ビジネスサイドのメンバーにはもともと材料研究者であった人も多くいます。当社のバリューに「リスペクトできる?」というものがあり、様々なバックグラウンドをお互いの専門性を尊重し合って開発を進めています。選考の際にはそこもきちんと確認しています。
候補者情報の一元化で採用活動に貢献
ーー:「Offers」経由で機械学習エンジニア3名の採用が決まりましたが、何か採用成功のコツはあるのでしょうか?
伊藤氏:そこまで特別なことはしていないと思います。
例えばPythonや機械学習といったキーワードで検索して、GitHubやQiita、経歴を見ていました。それで何かしら目を引くところがあればスカウトメールをお送りしていました。この段階では完全に技術マッチです。
プロフィールだけを見ても正直カルチャーマッチの判断までは難しいと思ったので、カルチャーマッチについては面談を進めていく中で判断していました。
ーー:他の副業サービスと比較して「Offers」の使い勝手はいかがでしたか?
伊藤氏:機械学習エンジニアを探す際、他のサービスも使っていましたが、それらと比較するとGitHubやQiitaがアカウントと紐づいてるのは非常にいいですね。そこである程度判断できるので、採用活動には非常に貢献してくれました。
あと、肌感覚にはなりますが「Offers」の登録者は返信率が高いなと思いました。3名採用できたのですが、早い方だと面談から2週間くらいで稼働してもうらうことができました。
タスクを渡すのではなく、タスクを作るところから依頼
ーー:副業人材との働き方について教えてください。まずどのような稼働や報酬形態なのでしょうか?
伊藤氏:2人が週2〜3日稼働で、残りのメンバーは平日の夜や週末に稼働していただいています。報酬は時給制となっており、マネジメントはタスクベースで行っています。
ーー:タスクの分配は伊藤さんが担当されているのでしょうか?
伊藤氏:タスクベースとお伝えしましたが、もしかしたら弊社の場合は一般的なイメージと違うかもしれません。というのも、弊社の場合はタスクを作るところから入ってもらっている方が多く、その上でタスクを渡しています。ですので、こちらで仕様を決めて渡す、というやり方ではありません。
だからこそユーザーの状況も全部お伝えして、その上で「どういう機能を作ればいいか?」「どうやって実装すればいいか」といった話から入ってもらってます。
ーー:今回採用できた機械学習エンジニアですと、どのようなタスクがありますか?
主に以下ですね。こちらを期限は特に設けず、アウトプットベースで進めています。
・アルゴリズム修正(拡張)
・機能追加
・図の作成、追加
・技術調査
・仕様案の策定
ーー:「タスクを作ってもらう」は印象的でした。なぜこのようなやり方にされたのでしょうか?
伊藤氏:副業の方にもできるだけ社内の議論に入ってきてもらいたい、というのが弊社の方針です。将来的には正社員化も視野に入れていることもあり、できるだけ内部まで見てもらいたい想いもあるんです。
副業人材と正社員の線引きはせず、情報はオープンに
ーー:副業人材とのコミュニケーションに関してはいかがでしょうか?
伊藤氏:定期的に全員と1on1を行っています。内容は人それぞれですが、タスクの具体的な相談をしている人もいれば、定例ミーティングに参加できない方に関してはプロダクトの進捗状況の共有などをしています。人によっては今後のキャリアの相談に乗ることもあります。
ーー:副業組織を運営する上で苦労したことや、課題だと考えていることはありますか?
伊藤氏:やっぱり人数が多くなってくると、スケジュール調整やコミュニケーションのコストが上がってしまうことですね。本業がある方ですとコミュニケーションを取れるのが夜の時間帯や土日だけになってしまうので、ちょっと大変な部分ではあります。ここはこれからの課題ですね。
ーー:基本的なコミュニケーションはどんなツールでされているのでしょうか?
伊藤氏:テキストコミュニケーションはSlackで、他にはオンラインのミーティングで行っています。進捗管理はTrelloやGitHubです。まとめると、以下のようになります。
正社員化を見据えての副業採用へ
ーー:正社員化も視野に入るのであれば、オンボーディングも重要かと思います。
伊藤氏:そうですね。オンボーディングは、しっかりやっていこうと取り組んでいる段階でして、今後さらにブラッシュアップしていきたいと考えています。
理由は2つあります。1つは、素材産業に対する馴染みがなかなかないと思うので、業界の課題や市場規模、将来性などについて理解を深めていただくために必要だという点。
もう1つの理由は、今までの開発経緯の共有ですね。どういう課題が存在していて、現在はどのようなサービスを提供していて、将来的にこういうものを作りたい、といった話をしています。
狙いとしてはモチベーションを高めてもらうっていう点と、開発にスムーズに入ってもらうという点です。資料もきちんと作り込んでいきたいですね。
ーー:最後に、今後の御社の採用戦略を教えてください。
伊藤氏:現在はプロダクトの成長度合いを見つつ、少しずつ正社員採用のアクセルを踏んでいけたらと考えています。
ただ、業界的にいきなり正社員で入ることにためらう方も多いかと思うので、まずは3ヶ月ほど副業で入ってもらって、それから正社員化というフローが取れればいいのかなと考えています。まさに副業転職という言葉が当てはまるのかなと。
ですので今後は正社員化を見据えた副業人材を多く採用しようと考えています。一方で、今後も特別な技術が必要であれば、ワンポイントで副業人材を採用していくことはあり得るかと思います。
ーー:ありがとうございました!